洪水災害原子力施設に関する洪水ガイド
作成の前提となるベストプラクティス
公開日:20131113
暴風雨「マルタン」が19991227日から28日にかけてフランス南部を襲い、数々の被害をもたらした。中でも、ブレイエ原子力発電所のサイトの一部が冠水し、発電所の運転上重要な系統が不具合をきたした。
この事象はサイトの洪水防護が十分でなかったことを露呈した。しかしながら、問題の洪水防護は、基本安全規則(RFSI.2.eが推奨する評価方法に依れば極限とされている洪水レベルを考慮して決定されていた。この基本安全規則は、原子力発電施設の外部洪水リスクの評価規則を明確にするため19844月に制定された。そのために、「安全加算水位(CMS)」、即ち原子力施設の適正な防護を確保する上で基礎となるサイトの境界で到達し得る極限水位の確定を可能とする方法を定めていた。安全加算水位は潮汐、高潮、河川の氾濫、ダム決壊など様々な現象を考慮に入れて計算されていた。洪水を招く可能性のあるその他の現象は、種々のアプローチに沿ってケースバイケースで考慮されていた。従って、海沿いサイトの洪水防護の設計では高波を考慮に入れていても、河川沿いのサイトではこの現象が無視されていた。しかしながら、ブレイエ・サイトを取り囲んでいた堤防を無益な存在に追いやったのは、ジロンド川の河口で暴風雨によって発生した風波であった。
この事象をきっかけに、2000年以降、原子力施設の洪水防護工の強化対策が講じられた。これと並行して、RFS I.2.eを見直し、原子力施設の洪水に繋がりそうな現象全体を体系的に考慮することが必要となった。20134月にASNが発表した原子力基本施設(INB)の外部洪水防護に関する洪水ガイはこのプロセスの終着点となっている。
本書は、ASNのガイドを作成するにあたりその基礎となった洪水災害に関するベストプラクティスの確立を可能ならしめた全ての投稿論文を集めている。