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原子力事業の規制の一般的枠組
原子力事業は公衆衛生法典の第L.1333-1条に定義されている。これらの事業は、人や環境の防護を目的に制定され、事業の全体又は一部に適用される種々の規定に準拠しなければならない。この章ではこうした規制全体を説明する。
1         原子力事業の規制の根拠
1.1      放射線防護に関する国際的な基準
放射線防護に固有の法的枠組みは、様々な機関が国際的規模で制定する規格、基準又は勧告がベースとなっている。中でも、以下の機関を挙げることができる:
   国際放射線防護委員会(ICRP);種々の専門分野の専門家から成る非政府組織で、入手可能な科学技術の知見の分析を踏まえて労働者、国民及び患者の電離放射線防護に関する勧告を出している。ICRPの最新の勧告は、ICRP 103として2007年に発表されている。
   原子力安全と放射線防護分野の「基準」を発表し、定期的に見直しを行う国際原子力機関(IAEA);ICRP 60の勧告を踏まえた電離放射線防護と線源の安全に関する基本要件(国際基本安全基準文書No.115)が1996年に発表されている。基本安全原則に関する新たな基準が2006年末にIAEAから発表され、ICRP 103の新勧告を考慮するため、国際基本安全基準(BSS)が2011年に改訂された(General Safety Requirements Part 3No. GSR Part 3(暫定版))。
   国際標準化機構(ISO);放射線防護体制の重要要素を形成する国際技術規格を発表している。国際技術規格は基本原則、コンセプト及びプラントと規制全体との接点であり、統一のとれた規制の適用を保証する。
注記:放射線防護ドクトリンの作成チャートをPDF版に示してあります(PDF版はこちら)。
欧州レベルでは、ユーラトム(Euratom)条約、更に言えばこの条約の第30条から第33条が電離放射線防護に関する欧州共同体規定の制定方法を定め、その適用方法に関する欧州共同体の権限と義務を明文化している。対応するユーラトム指令が加盟各国に課せられる。例えば、電離放射線リスクに対する住民及び作業員の健康防護に関する基本的な基準を定める1996513日のユーラトム指令第96/29号、医療目的の照射の際の電離放射線防護に関する1997630日のユーラトム指令第97/43号、並びに高レベル線源及びオルファン・ソースの管理に関する20031222日のユーラトム指令第2003/122号などである。
欧州委員会は、2008年、加盟各国が培った経験や国際基準文書(ICRPIAEA)の改正を考慮するため既存のユーラトム指令の統合及び改訂プロセスに着手した。20119月に採択された指令案が、2014年中の公布を目処に、目下、欧州レベルで審議されている。この件は、専門家グループによる追加評価を定期的に求めてきた原子力問題グループによって検討されている。201111月以降、ASNは専門家グループの会合に9回参加した。
注記:放射線防護の法律及び命令の構造を示すチャートをPDF版に示してあります(PDF版はこちら)。
1.2      フランスの原子力事業に適用される法典及び主な法律
フランスの原子力事業の法的枠組は、ここ数年、大規模な再編の対象となった。現在、法律に関する仕組みは十分に整備されており、施行条文の公布は未だ完全に完了していないとは言え、極めて前進している。
公衆衛生法典(CSP
CSPの法律の部、第I部、第III編、第III節、第III章「電離放射線」は、「原子力事業」全体を定義している。すなわち、物質か装置かに関係なく人工の線源から発生する、或いは自然起源の放射性核種がその放射性、核分裂性又は増殖性ゆえに処理される若しくは処理された時点で自然線源から発生する電離放射線の被ばくリスクを伴う全ての事業としている。この章には、事故後の環境汚染に因る放射線リスクを予防又は低減するための「対応作業」も含まれている。
CSPは、その第L.1333-1条で、欧州レベル(ICRP)で制定された放射線防護の一般原則(妥当性の証明、最適化及び制限)を謳っている。これらの一般原則はIAEAの諸要件でも、またユーラトム指令第96/29号でも取り上げられており、ASNが担当する規制行動の指針となっている。
同様にCSPは、放射線防護に関する規定の適用を管理する放射線防護検査を発足させている。ASNが組織化し、主導するこの検査については第IV章で説明する。更に、公衆衛生法典は行政罰及び刑事罰の制度も確定している。これらの制度についても第IV章で説明する。
環境法典
環境法典は様々な概念を定義している。環境法典の第L.591-1条に依れば、原子力安全防護(sécurité nucléaire)は「原子力安全(sûreté nucléaire)、放射線防護、悪意行為の予防と対策、及び事故時防災対応」をひっくるめた考え方である。しかしながら、「原子力安全防護」という表現は、依然として一部の条文では、悪意行為の予防と対策に限定されている。
原子力安全とは、「事故を予防するため又は事故の影響を制限するために講じられる、原子力基本施設の設計、建設、運転、廃止及び解体と放射性物質の輸送に関する技術的措置並びに組織化措置の全体[1]」である。
放射線防護は、「電離放射線に対する防護、すなわち、環境に及ぶ影響も含め、電離放射線が直接的ないし間接的に人に与える有害影響を阻止又は低減することを目的とする規則、手順、及び予防や監視手段の全体」である。
原子力に関する透明性は、「第L.591-1条に定義される原子力安全防護について一般公衆が信頼でき、アクセス可能な情報を手にする権利を保証するために講じられる措置の全体」である。
環境法典の第L.591-2条は、原子力安全防護に関する国の役割を述べている。条文は、「原子力安全防護に関する規制を定め、その適用に必要な管理体制を導入している」。環境法典の第L.125-13条に則り、「国は公衆衛生法典の第L.1333-1条の第1段に定義される原子力事業に伴うリスクについての公衆への情報提供と、これらの事業が人の健康や安全及び環境に及ぼす影響を監視しなければならない」。
原子力事業に関する一般原則は、環境法典の第L.591-3条、第L.125-14条及び第L.591-4条に謳われている。これらの原則は、本報告書の第2章の1で取り上げられている。
環境法典の第V編、第IX節の第II章はASNを設置し、その一般的使命と権限、並びに構成と運営を明確にしている。ASNの使命については本報告書の第2章、3.1項及び3.2項で紹介されている。
環境法典の第I編、第II節の第V章は、原子力安全防護に関する一般公衆への情報提供を取り上げている。この件については、本報告書の第6章で詳述する。
原子力事業に固有の規定が組み込まれている他の法典又は法律
労働法典は、正規雇用か否かに係わらず電離放射線に晒される作業員に関する個別の措置を定めている。これらの措置については2.1項で紹介する。
放射性物質及び廃棄物の持続可能な管理に関する2006628日の計画法律第2006-739号、いわゆる「廃棄物」法その後、一部分が環境法典の第V編、第IV節、第II章に編纂されているは、放射性物質及び廃棄物の管理の枠組を定めている。更に、この廃棄物法は、INB事業者に対して、施設で発生する廃棄物及び使用済燃料の管理や施設の解体に要する費用の引当制度を義務づけている。
最後に、防衛法典にも、原子力分野の悪意行為対策、並びに防衛関連の原子力事業や施設の検査に関する種々の規定が組み込まれている。
原子力事業に関する他の規制
一部の原子力事業は、上述の規制と同様に人や環境の防護という同じ目的でありながら、適用範囲が原子力に限定されない様々な規則の適用を受ける。例えば、影響評価、一般公衆への情報提供や意見聴取に関する欧州規定又は環境法典の諸規定、或いは危険物の輸送に関する規制や圧力容器の規定である。これら規則の一部の原子力事業への適用については、本報告書の中で取り上げていく。
2         種々の職種及び電離放射線被ばく状況に適用される規制
命令が定める個々の被ばくレベル及び制限値については、この章の補遺で紹介する。
2.1      作業員の一般防護
労働法典には、正規雇用か否かに係わらず電離放射線に晒される作業員の防護を謳う各種規定が組み込まれている。同法典は、管理区域での作業中に電離放射線リスクに晒される外部作業員の能動的防護に関する1990124日のユーラトム指令第90/641号と先述のユーラトム指令第96/29号の2つのユーラトム指令のフランス国内法への移植に取り組んでいる。
労働法典は、CSPに謳われている3つの放射線防護原則との関係を確定している。同法典の命令の部の放射線防護を目的とする条項は、人工の光学的放射に因るリスクに対する作業員の防護を定めた201072日の政令第2010-750号によって再編された。
2010421日のDGT/ASN通達第4号は、労働者の放射線防護に関する労働法典の規定の施行細則を明らかにしている。
労働法典の第R.4451-1条から第R.4451-144条は、(正規雇用か否かを問わず)職業活動の過程で電離放射線を浴びる可能性のある全ての作業員を対象とした単一の放射線防護制度を設けている。
これらの規定の中でも特筆すべきは下記の点である:
   機器、プロセス及び業務編成に対する最適化原則の適用(第R.4451-7条から第R.4451-11条)によって、事業主、特に雇用主が事業主でない場合の雇用主そして放射線防護担当者の間の責任履行の方法や情報提供の方法が明確になっている。
   予め正当化された特別被ばく又は緊急時の職業被ばくを考慮し特例が認められる場合を除き、年間線量限度を連続12ヶ月で20 mSvに設定(第R.4451-12条から第R.4451-15条)。
   妊婦(第D.4152-5条)、更に言えば胎児の線量限度を設定(妊娠から出産までの期間で1 mSv)。
放射線防護の国際基本安全基準を定めるユーラトム指令
目下欧州レベルで検討されている放射線防護の国際基本安全基準を制定する新たなユーラトム指令案は、実効線量限度を連続5年間で100 mSv(但し、1年間で50 mSvを超えてはならない)に代わって1年間で20 mSvに設定している。労働法典は2003年からこの変更を先取りしており、現行条文はこの将来の欧州要件を満たしている。
更に、ユーラトム指令第96/29号を踏まえ(眼球)水晶体に関して連続12ヶ月で150 mSvの線量当量限度を2003年に導入したフランスの規制は改正されることになる。実際に、2011421日のICRPの勧告を考慮し、新たな欧州指令案は水晶体の線量当量限度を年間20 mSvとする大幅な引き下げを提唱している。
区域分け
2006515日の省令(2006615日付官報で公布)によって、事業部門の如何を問わない監視区域、管理区域及び特別規制区域(特別管理区域)の画定に関する規則が制定された。この省令は、こうした区域で遵守すべき衛生、安全及び保守規則も定めている。
規制区域の画定にあたっては、全身の外部被ばくまた場合によっては内部被ばくに関する実効線量、四肢の外部被ばくに関する線量当量、必要ならば全身の線量率など様々な防護要素が考慮されることになっている。2008118日のDGT/ASN通達でこの省令の施行方法が明確にされている。
放射線防護専門担当者
放射線防護専門担当者(PCR)の使命は、放射線に晒される作業区域の画定、並びに放射線に晒される職場の調査や被ばく低減措置(最適化)の検討にまで拡大された。これらの使命を全うするため、PCRは受動型線量測定データ並びに能動型線量測定データを入手する(環境法典の第R.4451-112条)。放射線防護専門担当者の養成方法及び指導員の認証方法に関する20051026日の省令は、下記の3つの事業部門を区別している:
   「医療」部門;法医学検査を含む予防及び治療医学、歯学、医学生物学、生物医学研究、獣医学向けの核及び放射線に関する事業をまとめた部門である。
   「原子力基本施設(INB)/環境保護指定施設(ICPE)」部門;一つないし複数のINBが設置されている事業所、並びに指定施設として許可の適用を受けている施設を有する事業所をまとめた部門である。但し、上記医療部門の核関連事業を除く。
   「産業及び研究」部門;上記の「医療」部門及び「INB-ICPE」部門の事業を除き、労働法典第R.4451-1条に規定される原子力事業をまとめた部門である。
指導員は、フランス認証委員会(COFRAC)の公認機関から認証を受けていなければならない。
2009716日のASN決定第2009-DC-0147号は、PCRが原子力事業を営む企業の従業員でない場合に満足すべき諸条件を定めている。このように外部のPCRの手を借りることができるのは、ASNへの届出が義務づけられている原子力事業に限定されている。放射線防護専門家グループ(GPRAD)の意見を踏まえ、現在、20051027日の省令の改訂が検討されており、2013年中に改訂版が公布される予定である。
放射線防護有資格専門家の役割
EUTERP(放射線防護の訓練及び教育に関する欧州共通基盤)の一環で実施された調査研究作業を踏まえて、目下欧州レベルで検討されているユーラトム指令案は、RPE(放射線防護専門家)についてはコンサルティング業務を、またRPO(放射線防護官)についてはより機動的な役割を導入し、ユーラトム指令第96/29号で規定された「有資格専門家」(フランスではPCR)構想の進展を予定している。
RPEは、作業員及び公衆の被ばくに関する問題について、事業主又は雇用主に意見する役割を担っている。RPEの意見は、とりわけ、新規施設、規制区域の画定、労働者のクラス分け、検査プログラムの内容、適正な線量拘束値の最適化及び設定、被ばく労働者の教育プログラム、等々に関係するものとなる。
RPOは放射線防護の機動的な実施を担当する。その業務には、とりわけ、検査プログラムの効果的適用、個人線量モニタリング、線源に関する妥当な管理簿の導入についての検査が含まれる。
線量測定
作業員の線量測定を担当する機関の認可方法は、改正された2003126日の省令で規定されている。作業員の医療検診及び個人線量データの伝達方法は、20041230日の省令で明確にされている。ASNは、線量測定機関や研究所に対して必要な認可を交付する。これらの省令の改訂は2013年初頭に予定されている。
放射線防護検査
線源や電離放射線出力装置、防護及び警報装置、測定器具の技術検査、並びに環境検査は、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)の放射線防護担当部署や、CSPの第R.1333-97条に基づき認可を受けた機関に委ねることができる。放射線防護技術検査の内容や頻度は、201024日のASN決定第2010-DC-0175号で定められている。
技術検査の対象となるのは線源や電離放射線出力装置、環境、測定器具、防護及び警報装置、線源や発生した廃棄物・廃液の管理である。技術検査の一部は内部検査として事業者によって、また残りの一部は外部機関によって実施される(外部機関による検査は、IRSN又はCSPの第R.1333-97条に基づき認可を受けた機関によって実施することが義務づけられている)。
2.2      住民の一般防護
原子力事業に関する個別許可の範囲内で一般住民や作業員のために講じられる個々の放射線防護措置に加えて、CSPに規定されている幾つかの一般的な措置が電離放射線リスクに対する公衆の防護を確保する。
公衆の線量限度
原子力事業に因る公衆の年間実効線量(CSPの第R.1333-8条)は1 mSvに制限されている。水晶体及び皮膚の線量当量は、それぞれ15 Sv/年及び50 mSv/年に制限されている。実効線量及び線量当量の計算方法、並びに公衆への線量影響評価に採用される方法は、200391日の省令で規定されている。
消費財及び建設資材の放射線
消費財及び建築製品に天然又は人工の放射性核種を意図的に加えることは禁止されている(CSPの第R.1333-2条)。但し、食料品や手の届く場所に設置される資材、化粧品、玩具及び装身具を除き、公衆衛生高等審議会とASNの答申を受けて保健担当大臣により特例が認められる場合がある。200955日の省間令は、特例申請書類の内容とCSPの第R.1333-5条に規定される消費者への情報提供方法を定めている。この特例制度は、イオン化式煙検知器の段階的廃止を指導するため2011年に採用された。禁止の原則は、当初の構成材料又は食料品の調製に使用される添加剤に含まれる自然起源の放射性核種(例えば牛乳に含まれるカリウム40)、或いは消費財又は建築製品の構成材の製造品に含まれる自然起源の放射性核種には適用されない。
更に、原子力事業からの材料又は廃棄物がその事業に因る放射性核種で汚染されている場合又はその可能性がある場合には、これらの材料又は廃棄物の使用は禁止される。
建設材料の製造に使用した構成材料の中に自然起源の放射線が存在する場合、この放射線を制限する規制は目下のところ存在しない。
欧州レベルで現在検討されているユーラトム指令案は、建材中の自然起源の放射線を制限する新たな法的枠組みを導入している。このような規制はフランスには存在しない。この規制が導入されると、建材メーカーは建材の潜在的なガンマ線放射能力を測定するため試験を実施させることになるはずである。この目的で、「建築製品からの放射線」と命名された作業グループが、欧州標準化委員会(CEN)の、建材内に存在する自然起源の放射性核種の濃度を測定する欧州規格の作成を使命とする「建築製品」技術委員会に設置された。
環境放射線
環境放射線測定データを収集する全国ネットワークが2009年に構築された(CSPの第R.1333-11条)。収集されたデータは公衆の被ばく線量評価に一役買うことになっている。このネットワークの方針はASNが決定し、運営はIRSNに委ねられている(環境放射線測定全国ネットワークの組織化と研究所の認可方法を定める2005627日の省令)。
測定の質を保証するため、このネットワークに参加する研究所は、特に相互比較試験を含む認可基準を満足しなければならない。
飲料水中の放射性物質
CSPの第R.1321-3条に従って、飲料水は、その中に含まれる放射性物質について検査を受けている。検査方法は2004512日の省令で明確にされている。これらの検査は、地方保健局(ARS)が実施している衛生検査の一部である。水質の限度及び基準に関する2007111日の省令は、飲料水中の放射性物質について4つの指標を導入している。これらの指標と採用されている制限値は総アルファ線量(0.1 Bq/L)、残留総ベータ線量(1 Bq/L)、トリチウム線量(100 Bq/L)、そして基準総線量 TID0.1 mSv/年)−である。ASN勧告が添付された2007613日の保健総局(DGS)通達はこの規制に関連するドクトリンを明らかにしている。
公衆の健康防護を目的とする飲料水中の放射性物質に関する諸要件を定める欧州指針案は2012年に委員会で採択された。この指針案は、特に、飲料水中のラドンの有無に関する検査要件を強化しており、その移植に伴って2004512日の省令は改正されることになる。指針案の採択は、欧州議会での審議を経た後の2013年に予定されている。
食料品中の放射性物質
事故の際或いは他の放射線緊急事態の際に、食料品の消費又は販売の制限が必要となることがある。
欧州におけるこうした制限は、1989718日の理事会規則(ECC)第2219/89号で改正された、このような場合の食料品並びに家畜用の餌に関する放射能汚染最大許容レベル(NMA)を定めた19871222日の理事会規則(ユーラトム)第3959/87号によって決められている。NMAは「市場の一体性を維持しつつ公衆の健康を防護する」ために確定された。
原子力事故が明らかな場合、この規則の「自動」適用は3ヶ月を超えることはないはずで、固有の措置に引き継がれることになる(チェルノブイリ事故に固有の規則数値については付属書で取り上げられているを参照のこと)。
2011311日に福島原子力発電所で発生した事故を受け発電所周辺で作られた一部食料品の汚染評価を実施したところ、販売基準を超える放射能汚染レベルが明らかとなった。
2011年、欧州規則(EU)第297/2011号は、その後、欧州規則第351/2011号、第506/2011号、第657/2011号及び第961/2011号により改正され、日本からの食料品を対象とした汚染検査を統一して実施することを義務づけた。これらの欧州規定は、最初に日本の機関が輸出前検査を実施し、次いで欧州加盟国の領土に着いた際にも検査を実施する2段階体制の導入を想定していた。食料品の原産県に応じて、2段階の検査が欧州規則で制定された。
2012年には、2012329日の委員会の新たな欧州規則第284/2012号が採択され、施行規則(EU)第961/2011号を廃止した。この新規則は、その後、規則第561/2012号で改正されている。
前規則の基本原則全体が引き継がれているものの、一部の食料品(酒、ウィスキー、焼酎)が検査対象から外されている。更に、NMAの値は、201241日から日本の機関が適用するNMAの引き下げに伴って変更された。表1は、20113月以降日本で適用されたNMAの値をまとめたものである。
フランスの機関は、2011311日以降に日本で作られた動物性及び植物性の食料品全体の5から10%の検査率を201291日から適用している。
これらの検査の結果は、前述の欧州規則第284/2012号の付属書IIに規定されているNMAと比較される。分析を実施しているのは農業担当省のネットワークに参加している研究所(県議会に所属する9箇所の研究所)と税関部局や消費部局に所属する研究所(研究所共同部局)である。
120113月以降日本で適用されている最大許容レベルの値
2011年に適用されていた値
201241日から適用された値
食品の種類
セシウムの最大許容レベル(Bq/kg
食品の種類
セシウムの最大許容レベル(Bq/kg
飲料水
200
飲料水
10
牛乳及び乳製品
200
牛乳
50
生野菜
500
幼児用食品
50
穀類
その他の食品
100
放射性廃棄物及び廃液
INBICPEからの廃棄物及び廃液の管理は、これらの施設に関する個別規制制度の規定の適用を受ける。病院施設(CSPの第R.1333-12条)も含め他の施設からの廃棄物及び廃液の管理については、2008129日のASN決定第2008-DC-0095号によって一般規則が制定されている。これらの廃棄物及び廃液は、その場での放射性崩壊を計画、検査するための個別措置が規定されている場合(これは半減期100日未満の放射性核種が対象となる)を除き、正式に許可された施設内で処分されなければならない。
先述のユーラトム指令第96/29号で認められているにも拘らず、フランスの規制は、「放出閾値」、すなわちその値を下回る限り原子力事業で発生した廃液及び廃棄物を検査無しで除去できる一般放射能レベルの概念を取り上げなかった。実際に、廃棄物及び廃液の処分は、これらを発生させる事業が許可制度の適用を受ける場合(INBICPEの場合)にはケースバイケースで検査されており、これらの事業が届出の適用を受ける場合には技術命令の対象とされる場合もある。同様に、フランスの規制はユーラトム指令第96/29号に規定されている「軽微線量」、すなわちその値を下回る限り放射線防護面の対応は一切必要ないと判定される線量(10 mSv/年)の概念も採用していない。
2012年、ASNは使用済燃料及び放射性廃棄物の安全且つ責任ある管理に関する欧州の枠組を確定するユーラトム指令第2011/70号の移植規定の作成に参加した。
2.3      放射線緊急事態の際の人員の防護
事故状況或いは放射線緊急事態の際の電離放射線リスクに対する住民の防護は、被ばくの種類や規模に適応化された特定の行動(対応措置)を実施することで確保される。原子力事故という特定ケースにおけるこの種の行動は、INBに関するオフサイト緊急時計画(PPI)の改訂を定める2000310日の省間通達の中で、線量で示される介入レベルを組み合わせて確定された。これらの介入レベルは、ケースバイケースで実施すべき対応をその場で決定しなければならない公権力(県知事)にとって目安となる。
基準レベルと介入レベル
介入レベルは2009818日のASN決定第2009-DC-0153号によって改訂され、甲状腺被ばく線量が引き下げられた。以降、緊急事態で実施すべき防護措置や関連する介入レベルは次のようになっている:
   予測実効線量が10 mSvを超える場合には、屋内避難。
   予測実効線量が50 mSvを超える場合には、退去。
   甲状腺の予測線量が50 mSvを超える場合には、安定よう素の投与。
放射線緊急事態に介入する人員の被ばく基準レベルも、規制で定義されている(CSPの第R.1333-84条及び第R.1333-86条)。2種類の介入者グループが定義されている:
   最初のグループは、放射線緊急事態に対処するため事前に設置されている技術又は医療対応特別チームの人員で構成される。このチームの人員は放射線モニタリング、医学的適性検査、特別教育の対象となり、放射線リスクの種類に応じた装備を持っている。
   2つ目のグループは、特別チームには所属していないが、担当する役割の範囲内で介入する人員で構成される。
実効線量で示されるこれら介入者の個人被ばく基準レベルは下記の通り設定されている:
   グループ1の人員が被ばくする恐れのある実効線量は100 mSvである。介入が人員の防護を目的とする場合、この値は300 mSvに設定される。
   グループ2の人員が被ばくする恐れのある実効線量は10 mSvである。対応作業に伴うリスクについて情報を受けた介入者が自ら申し出て人命救助に当たる場合には、基準レベルの逸脱を例外的に認めることができる。
放射線緊急事態時の住民への情報提供
放射線緊急事態の下での住民への情報提供方法は、個別の欧州共同体指針で取り上げられている(放射線緊急事態の際に適用可能な健康防護措置及び取るべき行動に関する住民への情報提供に係わる19891127日のユーラトム指令第89/618号)。この指令は、防災の近代化に関する2004813日の法律第2004-811号に基づき下された、一部の工作物又は固定設備に関するオフサイト緊急時計画(PPI)に係わる2005913日の政令によってフランス国内法に移植されている。
その後2つの施行令が公布された。すなわち、
   放射線緊急事態の際の住民への情報提供に関する2005114日の省令。
   放射線緊急事態の管理に介入する人員のための医学的適性検査、放射線モニタリング及び教育又は情報提供行動に関する2005128日の省令。
2.4      持続的な被ばく状況の下での住民の防護
放射性物質で汚染されたサイトとは、原子力事業(非密閉線源の使用、ラジウム産業、等々)又はウラン或いはトリウム系統の放射性元素をそれなりの量含む原材料を使った産業活動(いわゆる「強化型の」電離放射線被ばくを招く活動)を以前に又は昔に営んだことによる汚染サイトである。この種のサイトの大部分は、ANDRA(放射性廃棄物管理機関)が定期的に配布し、改訂しているリストに網羅されている。
また、事故に因る放射性物質の環境内放出の結果、汚染サイトが発生する場合もある。
こうした様々な被ばく状況は、公衆衛生法典で「持続的な被ばく」と表現されている(ICRP 103では、2007年以降、「既存の被ばく状況」という表現を使用している)。これらの状況に関する国際的な条文に依れば、この種のサイトの管理が主に個別ケースに応じた最適化原則の適用に基づいているため、住民の被ばく限度は法律レベルで規定されていないのが実情であった。
IRSNの支援を受けASNと環境担当省が主導して作成した潜在的な汚染サイトに関する新たな管理ガイダンスは、放射性物質で汚染された(可能性のある)サイトの原状回復の中で遭遇する可能性のある様々な状況を処理する際に適用可能なアプローチを説明している。
 
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[1]環境法典の第L.591-1条に言う原子力安全は、この章の3項で説明する原子力基本施設の制度の目的の概念に比べ、より限定された概念である。
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