有限会社アール・エス・シー企画 フランス語はじめヨーロッパ言語など科学技術専門の翻訳会社 -- フランスの原子力安全・放射線防護に関する2014年ASN年次報告書
有限会社アール・エス・シー企画  お問合わせはお気軽にどうぞ TEL 03-3227-3676
トップページ

  トップページ > 最新情報
2013年のフランスの原子力安全及び放射線防護
公開日:2014415
2013年、ASNは、原子力安全及び放射線防護の監視活動を積極的に継続した。全体的に見ると、2013年はここ数年の状況を継承しており、ASNでは新たな大きな問題を確認していない。届出のあった事象件数も安定している。この見地に立つと、総合的に十分満足できる状況であった。
とは言っても、福島やエピナルのような大規模な影響を及ぼす出来事が起こり得ることを忘れてはならない。重大事象の存続は、常に起こり得るシビアアクシデントに対して警戒を怠ることがないように求めている。
とりわけ、次に控えている原子力安全や放射線防護に関する決断の重要性が、2013年の現状確認で色褪せることがあってはならない。実際、原子力発電炉の運転継続、欧州におけるシビアアクシデントの管理、放射性廃棄物の深地層処分計画、医療放射線被ばくの管理、或いはラドン被ばくに関して、近い将来、重大な決断を下さねばならない。
原子力安全や放射線防護には予見が必要である
原子力安全や放射線防護の管理に関するASNの責任は予見義務をともなう。ASNの委員会は、2013年、この方向で幾つかの戦略的見解を打ち出している。
EDFの原子炉の運転継続
フランスの電力システムは運転余裕を持っていなければならない。ASNは、「重大な一般欠陥が発見された場合に複数の原子炉の運転を同時に中断する必要性に対処するため電力システムに十分な余裕を確保する重要性[1]」を再確認した。
更に、現在の原子炉は安全上の理由によりいつかは廃炉されることになる。今から、この現実を見越しておく必要がある。これについて、ASNは、「安全上の理由による将来の廃炉に備え、あらゆる種類の発電設備やエネルギーの節約に関する短期的な決定の必要性」を特に指摘した。
この点に関して、ASNは、第410年安全レビュー以降の現存原子炉の運転継続が全く白紙であることを再確認した。この安全レビューは、高経年化の評価と安全の証明で当初想定された設計寿命に対応するため特に重要である。第4回安全レビュー以降の運転継続には、幾つかの必要不可欠な条件を満たす必要がある。先ず、安全上重要な機器は対応する諸要件を常に満足しなければならない。この問題は、原子炉容器や格納容器などの経年劣化し、取替できない機器の場合に特に重要である。更に、EPRなどの新世代の原子炉に適用される最新の安全要件に照らして施設を再評価する必要がある。そして最後に、福島の事故を受けて実施された安全追加評価で要求された改善措置を導入する必要がある。この安全追加評価は、特に「ハードコア」を成す高強度安全機器の導入と事故施設に数時間内で介入できる救護チームの配備を目的とするASNの技術命令をもたらした。これらの措置を全て導入するには、関連産業の例を見ない動員が必要となるはずである。
原子力事故の管理に関する欧州協力の促進
原子力事故の管理は、2013年に実施された放射線防護の基本安全基準指令の見直しと2014年に予定されている新たな原子力安全指令の採択の後に控える欧州規模の主要案件であり、これについて前進を図っていく必要がある。実際に、福島の事故は、チェルノブイリ事故に続き、この種の事故の予防とその影響の低減を目指すあらゆる安全措置とは別に、大規模で長期に及ぶ緊急事態に国際レベルで対処する準備を整えておく必要性を証明した。
サイトにおける原子力事故の管理に関する事業者第一責任とは別に、事故が発生した場合にその国の原子力安全規制機関が人的手段の増強を享受できるような例外的な緊急事態の管理措置を欧州に導入する必要があるとASNでは考えている。また、欧州規模で足並みの揃った事故後の国民防護対応を確保し、対応担当機関どうしの調整を図ることも不可欠である。こうした課題に対応するため、ASNは、欧州の安全規制機関と連携し、解決策を提示し、機動的な組織化を促進することになる。
ASNは、長期目標を見据えながら日々の活動を展開すべく細心の注意を払っている
長寿命高・中レベル廃棄物の今後
2006年の法律は、長寿命高・中レベル(HA-MA-VL)放射性廃棄物の深地層処分原則を採用した。安全や放射線防護の課題から見たこの処分方式の妥当性は、国際的に認知されている。
とは言え、ASNとしては、その安全の証明が提供されてはじめて、特定のプロジェクトについて見解を打ち出すことができる。これに関しては、今後選定されるサイトの特性や処分場で受入れる廃棄物の種類及び量に関する明細書が決定的な要素となる。このため、ASNは、2013516日の意見書第2013-AV-0179号で、「エネルギー政策、特に使用済燃料の処分問題について考えられる選択に応じて廃棄物の増種・増量が生じる場合、明細書の変更を関係者に提出しなければならない」ことを強調した。いずれにしても、ASNは、深地層処分が実際に使用できる時期についての避け難い不確実さを考慮し、HA-MA-VL廃棄物中間貯蔵施設の安全性が維持されるよう監視することになる。
医用撮像における患者の被ばく線量増大の管理
医用撮像における電離放射線被ばくは、自然放射線被ばくに次ぐフランス国民の第2の被ばく源で、ここ数年増加傾向にある。医療用放射線被ばくの管理はASNの優先課題である。必要性が明らかな場合に限って電離放射線を使用する妥当性の証明と、検査における被ばく線量を最大限低減する最適化との2つの方式を加えることで管理に役立てることができるはずである。
医用撮像分野でASNが実施した検査、並びにASNに届出された事象の経験フィードバックは、プラクティスの最適化に不備があることを明らかにした。この分野における改善は、とりわけ、照射線量の把握、撮像設備の品質管理並びに医学物理専門家の増員を通じて実現される。
放射線医療被曝の管理も同様に、妥当性の証明原則を厳格に適用することで実施される。これには、グッドプラクティスの採用強化やスキャナの代わりに磁気共鳴映像法(MRI)の使用可能性を高めることが関係してくる。
放射線療法
放射線療法はがん治療の主要療法で、がん患者の半数以上に使用され高い治癒率(約80%)を収めている。エピナルやトゥルーズの事故以来、放射線療法に対するASNの管理は厳しさを増している。
放射線療法は、目下、著しい技術革新の真っただ中にあり、質の確保がそのペースに追いつけない状況である。益々複雑になっているこうした設備を使いこなすには、十分な数の医学物理及び線量計測物理の専門家チームが必要である。確かに進歩は確認されているにしても、欧州の他の国々に比べると状況は必ずしも満足できるとは言い難い。
従って、ASNは、放射線療法や医用画像技術の放射線防護を前進させるため、保健分野で下す決定の重要性にもう一度関心を引いている。常に起こり得る事故の確率は、医学物理専門家の不足で上昇した。この専門家不足の一因として、保健専門家という身分がないことや大学に特定の専門課程が用意されていないことが挙げられる。
ラドン
肺がんの原因となるガス、ラドンは、地域によって大きな違いが見られるもののフランス国民の電離放射線被ばくに大きく寄与していることから、ASNにとって懸念材料となっている。
現在、ASNは、健康/環境計画の一環として、ラドンの検知と移行、すなわちラドンの発生レベルによって優先県に指定されたフランスの31県に存在する公衆受入れ施設内のラドン濃度を低減する措置を中心に活動を進めている。
2013年には新たな要素が介在した:
1.       放射線防護・原子力安全研究所IRSNと地質・鉱山調査局BRGM)によって作成されたラドン発生源となり得る箇所の新たな市町村レベルの地図。これによって、危険区域をより明確に特定できるようになった。
2.       放射線防護の基本安全基準に関する新たなユーラトム指令第2013/59号。住宅も含め建物内でのラドン被ばくに因る長期リスクに対処するための国の行動計画の作成を特に求めている。
従って、新たな規制方針が省庁間で決定され、これらの要素を考慮することになるはずである。ASNとしては、ラドン関連リスクに対する住民防護の大規模改善を目指す提案を行う予定である。
原子力安全及び放射線防護の課題に持続可能な形で対応できる国の管理
2014年の財政法律が緊縮する中で、ASNは予算活動に極めて敏感に反応し、雇用、運営クレジット及び専門評価能力に関する手段を維持することができた[2]
中でもASNが強調したのは、原子力施設の管理高経年化、安全レビュー、福島の事故の余波、等々だけでなくここ数年で社会問題化が顕著となっている医療分野患者の診断や治療に放射線利用が増えているにおける放射線防護の管理についても、経時的な仕事量の増大が避け難いことである。公財政の構造的均衡の回復という非常に大きな制限の中で、原子力安全や放射線防護の管理に貢献する手段を持続可能な形で確保するには、原子力事業者も組み入れながら、全面的な透明性を確保しつつ議会の管理の下で財源を再編成する以外にないというのがASNの見方である。
更に、ASNとしては、命令した作業の履行に際立った遅れが生じた場合に罰金制度を導入することで、ASNの原子力施設管理ツール全体が拡充されることを願っている。
*
*   *
原子力安全及び放射線防護の管理は、ASNにとって、厳格性、専門知識そして透明性を持って完全に独立した立場で遂行に専念すべき主要業務である。従って、ASNは、法律で委ねられた使命を全うするため自らが設定した長期目標を見据えながら日々の活動に邁進すべく最新の注意を払っている。
___________________________
年次報告書の章構成
·         3- 規制
·         7- 国際関係
 
印刷
Copyright© 有限会社アール・エス・シー企画 All Rights Reserved.