Contrôle誌188号:環境放射線のモニタリング
パリ発、2010年6月1日
公開刊行物
第188号−論説
電離放射線に対する住民や環境の防護は、第一に、環境放射能のモニタリングが基本である。
環境問題への社会の関心の高まりとともに、このモニタリングに対する関心も強くなっており、その実施状況について様々な疑問が提起されている。
このような背景から、トリキャスタンとピエールラットの原子力サイト周辺で2008年7月に発生した「ラ・ガフィエール」川の天然ウラン汚染事故は、メディア、公権力並びに公衆の注目を一手に浴びることになった。彼らが注目したのは原子力サイト周辺、特に地下水の放射能モニタリング方法で、実施されているモニタリングの妥当性について疑問が投じられた。
事実、環境放射能のモニタリングは、環境区分(空気、水、動物相及び植物相)全体と国土全体を対象に行う昔ながらの手法である。このモニタリング手法は、システム全体の整合性や信頼性に尽力する多数の関係者を頼りにしている。
環境放射能のモニタリング手段を導入する必要性は、核実験による大気汚染の影響に対する疑問の声とともに1950年代から出現した。その後、原子力発電が徐々に導入されるとともにモニタリングも拡大し、1986年のチェルノブイリ事故をきっかけに強化された。
原子力の透明性と安全に関する2006年6月13日法は、環境保護に関する法律や規制の枠組みを強化している。爾来、環境は原子力安全と同レベルの保護対象となっている。この法律は環境情報の透明化や公衆による閲覧の面でも大きな風穴を開け、関係者の役割を強化した。すなわち、原子力安全の情報と透明性に関する高等委員会(HCTISN)の設置と地方情報委員会(CLI)の役割強化である。
透明性に関しては、2010年2月に全国環境放射能測定ネットワークのインターネットサイトが開設され、公衆は環境放射能の測定全体を直接閲覧できるようになった。これには、IRSNの支援を受け2002年に原子力安全機関が着手した作業が活かされている。この作業は環境放射能のモニタリングに関する関係者(IRSN、原子力事業者、団体、公権力、等々)全員の協力と継続的な参加を必要とした。
モニタリング戦略は、環境保護をめぐる社会の新たな要求、技術の進歩、規格化の進展、最近の考察結果、国内及び海外の研究成果などを考慮し、絶えず問いただしていく必要がある。国内領土の放射線防護に関する連続監視体制の構築を使命とするASNは、様々な要求、進歩及び考察結果が全体的に国内で導入されているモニタリング戦略に統合されるよう監視している。
このContrôle誌188号では、環境放射能のモニタリング現行システムの多様性を紹介し、現時点の課題を報告する。
ジャン=クリストフ・ニエル、ASN総局長
目 次
テーマ:環境放射能のモニタリング
1. 環境放射能のモニタリング:枠組み、目的、課題、そして展望
Julien Collet、環境・緊急事態局長、Pierrick Jaunet、副局長、ASN
2. 全国環境放射能測定ネットワーク
Pierrick Jaunet、環境・緊急事態副局長、ASN
環境中の放射能
3. 最近50年のフランスの環境中の人工放射能の変化と対応線量:現在の原子力施設運転の影響
Philippe Renaud及びSylvie Roussel-Debet、大陸・海洋環境放射能生態学実験室(LERCM)、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)
4. 樹齢50年を超える2本の樹木の年輪からサクレイCEAセンター諸施設からのトリチウム気体放出を辿る
Yves Bourlat、サクレイCEA副所長、防護/保安/環境各ユニット責任者− DSM/SAC/UPSE;Jean-Michel Taillade、サクレイCEA浄化・環境業務担当− DSM/SAC/UPSE;Nicolas Baglan − CEA/DAM/DIF;Fabien Pointurier − CEA/DAM/DIF
透明性と環境情報
5. 環境情報の透明性に関する公衆の要求の変化に対応するASNの行動
Nathalie Clipet、業務公報室責任者、コミュニケーション・公衆情報局(ASN)
6. 環境モニタリングの課題と地方情報委員会(CLI)の行動
Suzanne Gazal、CLI全国連合(ANCLI)科学委員会議長;Monique Sené、ANCLI副議長、CLI全国連合(ANCLI)科学委員会副議長
7. 環境放射能指数
Marc Fourmier、環境・緊急事態局担当者、ASN
測定の質を確保する
8. 環境放射能を測定する:それほど単純でない....
Guy Granier、分析法確立委員会技術責任者、マルクールCEA
9. 環境中の放射性核種測定の標準化
Dominique Calmet、ISO TC 85/WG17及びTC 147/WG4グループ議長、BNENのM60-3委員会委員長;Philippe Béguinel、BNENのM60-3委員会「水」グループ責任者;Marie-Christine Robé、BNENのM60-3委員会「大気」グループ責任者;Guy-Philippe Oswald、BNEN事務局長;Laurence Thomas、AFNOR事務官
10. 環境放射能測定研究所の認可
Marie-Noëlle Levelut、環境・緊急事態局担当者、ASN
国内領土の環境区分全体を対象とする連続モニタリングを保証する
11. IRSNにおける環境放射能モニタリング:改良の見通し
Jean-Marc Peres、環境放射能研究・モニタリング課長、環境・介入局(DEI)、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)
12. 食糧の放射能モニタリングと食品担当省の対応
Charlotte Grastilleur、食品法制室長、食品品質副局、食品総局、食料・農業・漁業省
13. 放射能緊急事態又は事故後状況での環境放射能の測定
Didier Champion、環境・緊急事態局長、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)
14. 団体が行っている環境のモニタリング:環境放射能の市民観測所
David Boilley及びMylène Josset、西部放射能モニタリング団体(ACRO)
15. ASPAが管理する大気放射能モニタリング・ネットワーク
Guy Clauss、技術・品質拠点責任者、アルザス地方大気汚染モニタリング・調査団体(ASPA)
16. ANDRAの恒常環境観測
Elisabeth Leclerc、環境観測・モニタリング、科学局、ANDRA(放射性廃棄物管理機関)
17. 建物内の放射能濃度測定
Jean-Luc Godet、電離放射線・保健局長;Marie-Line Perrin、副局長;Cyril Pineau及びEric Dechaux、電離放射線・保健局担当責任者(ASN)
18. フランスのEDF原子力発電センター周辺環境のモニタリング
Vincent Chrétien及びPierre-Yves Hemidy、原子力発電事業部、EDF
19. ラ・ハーグAREVA NCサイトの環境放射能モニタリング
Serge Le Bar、ラ・ハーグAREVA NC施設の品質・保安・環境安全部;Patrick Devin、AREVAの安全・保健・保安・環境部
20. トリキャスタンAREVAサイトの事業の環境放射能影響の追跡
Cathrine Marca、Fédéric Brun、Patrice Florens、Jany Petit、ピエールラットAREVA NCのトリキャスタン・サイト環境安全事業部;François Garnier、品質・保安・安全・環境部、EURODIF;Patrick Devin、AREVAの安全・保健・保安・環境部
21. ヴァルデュックCEAサイトの環境モニタリング
Philippe Guetat、副局長;Laurent Jaskula、放射線防護課長、ヴァルデュックCEA
22. 軍港INBS周辺のモニタリング
Donald Jaskierowicz、チーフ薬剤官、科学・技術顧問、海軍参謀部;Stéphane Quéré、少佐、原子力施設担当補佐、フランス海軍
23. 環境モニタリングと独立した専門家評価:カダラーシュ地方情報委員会の経験
Monique Foucher、カダラーシュCLIに参加する南部FARE団体代表者
欧州及び国際規模の枠組み
24. 環境放射能のモニタリング:欧州委員会の役割
Constant Gitzinger、エネルギー総局、欧州委員会
25. 米国の大気中放射能モニタリング・ネットワーク
J. Scott Telofski、PE、RadNetプログラム責任者;Daniel R. Askren、Ph.D.、RadNet運営責任者;Charles M. Petko、Ph.D.、プログラム解析員;Ronald G. Fraass、NAREL実験所所長、米国環境保護局、放射線・屋内空気部(ORIA)、放射線・大気分析環境実験所、NAREL(米国アラバマ州モンゴメリー)
26. 環境モニタリング− OSPAR放射性物質戦略の目標達成に向けた展開の第3回定期評価
Dr Justin P. Gwynn、OSPAR放射性物質委員会副委員長、ノルウェー放射線’防護機関、Tromsø(ノルウェー)
27. 沿岸地域統合管理のための国際協力
Emanuel Bosc、研究担当;Fanny Houlbrèque、研究担当;Florence Boisson、IAEA顧問;Jan Scholten、研究局長;Maria Betti、環境実験所総所長、国際原子力機関(IAEA)モナコ
2010年2月、3月及び4月の原子力安全と放射線防護ニュースダイジェスト
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