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Contrôle187号:
 
パリ発、2010年4月14日
公開刊行物
 
 
2009年は、それ以前の年と同様に、原子力施設の分野で十分満足できる年であったとASNでは判断している。とはいえ、レベル2の臨界関連事象が2件、2009年に発生した。一つはマルクールのMELOX工場で、もう一つはカダラーシュのプルトニウム取扱技術施設(ATPu)である。この他に、ASN2009年に特に関心を抱いたのは、原子力発電所の蒸気発生器の状態である。
身近な原子力の分野では、放射能治療センターの状況が相変わらず異質であるにしても、それ以前の年に比べ2009年には放射能療法の進歩が際立っていたと見ている。更に、神経病学や心臓病学の一部の論文を中心にインターベンショナル放射線学が話題を集めた。
2009年フランスの原子力安全・放射線防護の現況に関するASN報告書は、ASNの検査活動を紹介しながら2009年一年間を総括している。また、今後の重要課題も説明している。
3回目となるこの報告書は、201047日、プレス向けの公開オーディションの際に理事会から議会に提出された。
 
201048
Jean-Christophe NIEL
ASN総局長
 
187論説
パリ発、2010年3月2日

 

原子力安全機関(ASN)は、国に代わってフランスの原子力安全と放射線防護を管理し、労働者、患者、公衆及び環境を原子力事業に伴うリスクから保護し、市民の情報取得に貢献することをその使命としている。
ASN2006613日付の原子力透明性と安全に関する法律(TSN法)で設立された独立行政機関で、5名の委員からなる理事会で運営される。
今年で3年となるが、例年通り、ASN理事会は、2009年フランスの原子力安全・放射線防護の現況に関するASN報告書を皆さんに提出する。
2009年は、前年までと同様、原子力施設の分野で十分満足できる年であった。とはいえ、レベル2の臨界関連事象が2件、マルクールのMELOX工場とカダラーシュのプルトニウム取扱技術施設(ATPu)で発生した。後者の事象はより大きな反響を呼んだ。ASNとしては全ての検査対象事業と同様にIRSNの専門家評価をもとにして厳格且つ透明に取り組んだ深刻な問題であると、理事会は特に指摘している。ASNは、CEAに対して、自前施設の厳格な運転の重要性を再確認した。
この他に、ASN2009年に特に関心を寄せたのは、原子力発電所の蒸気発生器の状態である。これらの蒸気発生器について、EDFは予期せぬ新たな経年劣化を明らかにしていた。ASNは、安全レベルが満足できること、また交換が十分に繰り上げられることを確認している。
身近な原子力の分野では、放射能治療センターの状況が相変わらず異質であるにしても、それ以前の年に比べ2009年には放射線療法の進歩が際立っていたと見ている。この異質な状況から、ASNは、治療の安全条件が整うまで、特に放射線物理技師と操作技師が十分な数揃うまで、一部の放射線治療センターの運営を停止することになった。更に、神経病学や心臓病学の一部の論文を中心にインターベンショナル放射線学が話題を集めた。その理由は照射線量が高くなる可能性であった。
この臨床方法の妥当性の証明について、ASNでは、COFREND、並びに溶接研究所を含めた様々な関係者が行った有望なガンマグラフィの研究を確認した。これらの研究は、事故時の影響が大きくなる恐れがあるため、イリジウム192によるガンマ線検査に代わる技術についての材料を提供できる。
理事会は、ASNにとって2010年の主なトピックを下記のように考えている。こうした優先課題は、多年度戦略計画で決定された基本戦略を反映している。ちなみに、2010年から2012年期間では、活動報告の方法、原子力安全と放射線防護を統合したビジョン、そして国際事業が特に取り上げられている。
報告
ASNにとって、独立性は孤立を意味するものではない。ASNは公衆に情報を提供し、全ての関係者、特に地方情報委員会(CLI)との関係を拡大し、その活動を議会に報告し、海外の規制機関と協力する。
2009年には、地方のメディアや議員に向けた活動を強化し、原子力施設の地震リスクに関する公開セミナーをスイスの原子力安全規制機関と共催し、特にEPRの計測制御系に関する常設専門家グループの意見を受けてASNが決定した見解を発表した。
またASNは、国民議会や上院の委員会、更には原子力安全の情報と透明性に関する高等委員会(HCTISN)が開催したATPu、再処理ウラン並びにEPRに関する幾つかの公聴会に参加した。国会科学・技術選択評価委員会(OPECST)に対するこの2009年度年次報告書の提出並びに公聴会への参加に加えて、理事会は、ASNの活動範囲となる重要な社会的案件について議会との交流拡大を願っている。
ASNは、20095月ウィーンで開催された使用済み燃料の安全と管理、並びに放射性廃棄物の管理に関する共同協定の審査会議にフランスの報告書を提出した。また、2009年には、IAEAが組織する同種機関による国際的な監査ミッション、総合規制評価サービスIRRS)の追跡調査ミッションを迎え入れた。専門家は、2006年の第1回ミッションで彼らが作成した勧告をASNが実質的に導入していると指摘している。対応する報告書、並びに共同協定のために作成された報告書は、ASNのサイトwww.asn.frから入手可能である。ASNは、これらの報告書をフランス国内でより広範囲に配布し、他の国々でのIRRSミッションに参加することでこうした活動を継続する予定である。
ASNは、2010年には、その決定プロセスの透明化を強化する予定で、そのため、ASNIRSNに委託する主要なトピックについては、ASNの決定と同時に、この決定を下す上で拠りどころとなるIRSNの対応する意見書も公開することになる。ASNは、原子力施設で行った検査の事後書簡を2002年から、また放射線治療事業の検査に関する事後書簡を2008年から公開している。掲げる目標は、産業、研究及び医療分野でASNが行う様々な検査の事後書簡を全て公開することである。ASNは、TSN法で制定された情報公開義務を事業者が遵守しているかの監視も行う。
原子力安全と放射線防護の統合ビジョンの展開
ASNは、技術や機器だけでなく組織面や人的ファクタ、保安、そして環境面も考慮する、原子力安全と放射線防護の統合ビジョンを展開した。ASNは原子力施設の技術規制改正という重要な作業を継続している。
TSN法は10年毎に原子力施設の安全再審査を義務づけている。900 MWeクラスの最初の原子炉は2009年に第310年検査を迎えた。ASNは、この第3回安全再審査の結果を受けて各原子炉の運転継続適性を決定する。更に、EDFは、40年を優に上回る原子炉の運転期間延長の意向をASNに通知してきた。ASNでは、これから始まる討論で、安全再評価研究の狙いがEPRの安全目標を基準とするように監視することになる。
政府は、GDF-Suezも出資する2基目のEPRをパンリーに建設することを発表した。ASNは、フランスに新事業者が出現することは新たな作業方法をもたらし、フランスの原子炉の安全レベル向上に貢献するはずであると表明する一方で、このプロジェクトのガバナンスの決定が重要であることを既に指摘している。ASNは、注目するこのプロセスに協力すべく万全の態勢を敷いている。
国の放射性物質・廃棄物管理計画(PNGMDR)2010-2012年版が完成した。ASN理事会は、放射性廃棄物全体の様々な管理・処分事業部門を早急に活用することが原子力安全や放射線防護にとって重要であると主張している。これは、特に、長寿命低レベル廃棄物(FAVL)と長寿命高レベル廃棄物(HAVL)の処分プロジェクトに言えることである。
特に医療分野の放射線防護について、ASNは、2008年以来、十分な人数の放射線医師や線量測定技師を確保するまでの間の暫定的な放射線治療センター運営基準を要求してきた。基準は2009729日に発表された。ASNでは十分な人数を確保するまでには5年から10年を要すると見ており、今後も彼らのレベルアップに注意を払っていくことになる。2010年には更に、ASNは、放射線治療センターに義務づけられた品質保証の実施、特に好ましからざる事象の収録と分析の実施を点検する。放射線治療分野における患者の放射線防護についてASNが主催した国際会議は、あらゆる事故を除き患者の約5%と関係する放射治療の併発症や副作用の案件の重要性に照準を定めていた。ASNでは関連する研究の進捗を見守っていく。
ASN2010年により高い関心を寄せているもう一つの案件が、診断や治療目的の医療撮像技術(スキャナーやインターベンショナル放射線)の利用頻度上昇にともなう線量増である。
全国環境放射能測定ネットワーク(RNMRE)は、高品質の測定手段を広範囲に普及させるのが本来の目的である。こうした測定を行う研究所のASNによる認定プロセスがこの品質を確保する。ASNが指針を制定し、IRSNが管理を担当するこのネットワークは、2010年初頭新たなサイト、www.mesure-radioactivite.frを立ち上げている。このサイトは環境中の放射能測定結果を全て収集し、教育学的な説明書を通じて原子力事業による線量を公衆に伝達する役割を果たしている。ASN理事会は、このネットワークの拡大を重要視している。
国際的取組みの掘り下げ
原子力安全に関する欧州の法制が存在していなかった中で、EU評議会は、2009625日、ASNが大いに尽力した原子力施設の安全に関する指針を採択した。この指針は、法的な拘束力を持つ原子力安全に関する欧州共同体の枠組みを構築する上で重要な条文である。特にEUの全加盟国に原子力安全に関する法的な枠組みと独立した安全規制機関の制定を義務づけ、IRRSミッションをベースにしたピアレビュー制度を導入し、公衆への情報提供、教育及び管轄に関する諸規定を盛込んでいる。ASNはこの指針の移植形態に注意を払うことになる。移植は2011年に完了しなければならない
ASN理事会は、原子力新興国における原子炉設置条件について行ったと同様、医療用放射性元素の生産に関する見解を公表した。サクレイのOSIRIS原子炉を含め世界の生産量の大部分を供給している原子炉は、運転開始から40年を経過している。放射性元素の不足リスクがこれら原子炉の安全を棚上げする事態に行き着いてはならず、欧州や国際的規模の協議或いは検討に繋げる必要があるというのがASNの見解である。新たな規約により、ASNは課題の案件についてより強力な公式見解を打ち出すことができる。
ASNは、EPR原子炉の計測制御系の設計について、英国とフィンランドの安全規制機関(それぞれHSESTUK)とともに共同宣言を発表した。協議に基づくこの種の活動は今後も継続する。特に、フィンランドのEPRのコンポーネント製造品質に関しては、HSESTUK、そして米国安全規制機関(NRC)との共同分析が実施されることになっている。理事会としては、こうした重要案件をめぐる安全規制機関どうしの国際協議はプロジェクト全体の安全にとって有益であると判断している。ASNでは、原子力安全の世界統一を目指し、また国際基準として認識されることを期待しつつ、この種の活動を継続する予定である。
ASNとは、フランスの民用原子力事業の原子力安全と放射線防護を管理する機関である。スタッフの能力と参加によってその役割を全うし、厳格で効率的且つどこからも影響を受けることなくその責任を果たすことができる。また、IRSNの職業意識と専門家評価によって、ASNはその活動を全うできる。ASNはフランと世界の原子力安全及び放射線防護を進歩させるために自ら制定した4つの価値観、すなわち独立性、能力、厳格さ、そして透明性を守りながらその使命を果たしていく。
 
 
 
 
 

 

 
2009年フランスの原子力安全と放射線防護の現況に関するASN報告書抜粋
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