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建設中又は運転中のPWRのポスト福島ハードコアに関する
原子炉専門家常設グループ(GPR)の意見書
20121213日及び20日にパリで開催された会合
2012720日付書簡CODEP-DCN-2012-039416で表明された原子力安全機関(ASN)委員長の要求を受け、原子炉専門家常設グループ(GPR)は20121213日と20日に会合し、2012630日にフランス電力(EDF)からASNに提出された現在運転中の原子炉並びにフラマンビル3EPRに対するポスト福島ハードコアの導入に関する書類について見解を打ち出した。技術審議の過程で、EDFは幾つかの見解及び対応を表明した。これらについては、具体的に確定した形でASNに提出される予定である。
GPRは、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)が実施しその報告書2012-009に記されている前述の書類に関する評価を検討し、下記の事項に関するIRSNの結論を了解した:
·         ハードコアの安全面の目的及び安全性の証明におけるハードコアの位置づけ。
·         現在運転中の原子炉並びにフラマンビル3EPRに関する、使用済燃料貯蔵プールを含めたハードコアの内容。
·         特にハザード防護の頑強さを確保するための関連諸要件。
会合中にGPRが出した勧告は、付属書にまとめられている。
GPRとしては、与えられた期限にしては、EDFに要求された作業が複雑であったことを強調しておく。このため、EDFは、極端な自然ハザード又はこの結果として起こり得る内部ハザードの際の設備の挙動に関する詳細な評価研究がないため、ハードコアとこれに関連する諸要件の確定手順を首尾よく終わらせることができなかった。EDFは、2012630日に提出した書類で全く又は殆ど取り上げられていない幾つかの点(施設内で発生する諸現象、組織面及び人的因子、ハードコアの物理的措置に関連する設計、製造、運転要件、等々)について、或いは実現可能性に関する幾つかのオプションの選択の妥当性についてどのような手順を適用すべきか掘り下げた検討や評価研究を継続している。
この点に関して、現行安全基準を遥かに凌ぐハザードに耐えることができるハードコアの定義という野心的な選択を考慮し、将来的にハードコアの頑強さ自体を揺るがしかねない概算的評価の余地がない詳細な検討に基づいた、ハードコアの定義とその導入に関する必要な協議のために十分な猶予期限を与えるのが肝要である。
ハードコアの安全面の目的
GPRは、EDFがハードコアに選定した「持続的な環境への影響」がないとする目的に、緊急時段階を含め放射性物質の大量放出の制限を付け加える必要があると考える。
運転中の原子炉のハードコアの内容
現在運転中の原子炉について、GPRはハードのコアの内容に関するEDFの提案を検討した。
当初EDFが提案した戦略は、1次冷却系の「フィードアンドブリード」タイプの手順による炉心の冷却とベント・ろ過装置による余熱の格納容器外除去に基づいていた。GPRは、この戦略だと、燃料(第1バリア)の状態を確認することなく、燃料と環境との間に介在する第2及び第3バリアを自主的に解除しかねない点に特に留意した。よって、この戦略を変更すべきであると考える。
GPRとしては、ハードコアは、現行基準を凌ぐ規模の不測事態に際して、3つの基本安全機能の確保を、それも十分な信頼度で可能ならしめるものでなければならないと判断する。すなわち、
·         反応度の管理においては、EDFは、ハードコアについて想定した地震規模で制御棒クラスタが十分な深さまで落下することの納得できる証明を提出する必要がある。
·         炉心の冷却及び余熱の格納容器外除去においては、ハードコアは炉心溶融の回避を第一に目指すべきであり、そのためにできる限り長時間バリアの健全性を維持し、格納容器のバイパスリスクを制限できる解決策を優先しなければならない。
·         閉じ込めの確保においては、格納容器の隔離、余熱の格納容器外除去、並びにシビアアクシデント状況下で閉じ込め機能の健全性を損なう恐れのあるエネルギー現象の管理を可能とする機器をハードコアに含める必要がある。
フラマンビル3 EPRのハードコアの内容
EPRは、その設計当初から、現在運転中の原子炉に比べると、ヒートシンク及び電源全喪失の予防や炉心の溶融を伴うシビアアクシデントの影響制限に関する追加措置が講じられている。また、地震や洪水などの外部ハザードに対してもより強固に防護されている。EPRについてEDFが提示したハードコア案は、極端な外部ハザードに因るシビアアクシデントの放射線影響が設計時の一般目標に合致することを目指しており、GPRとしては満足できると判断している。
燃料建屋及び原子炉建屋のプール
(開放時の)原子炉建屋並びに燃料建屋のプールに関して、GPRは、燃料集合体が露出した場合に放射性物質の放出を制限できる技術的な対応措置がないため、これら燃料集合体の貯蔵ピットの極端なハザードに対する構造的強度並びにサイホン効果による流出阻止についての証明は特に頑強でなければならないと見ている。
「サポート」系
所謂「サポート」系について、EDFは、現在運転中の全てのユニットに、既存手段からできる限り独立したハードコア専用の計測制御系及び配電系を導入することを約束した。GRPとしては、これがハードコアの頑強さ、特に施設で誘発されるハザードに対する頑強さに大きく寄与すると見ている。
組織面及び人的措置
極端なハザードに対処するハードコアの能力は、事態を管理し所掌の対策を決定するEDFの組織や人材の能力に基づいていることを、GRPとしては特に指摘しておく。
EDFは、ASNの決定に従って、20121231日までにハードコアの組織面及び人的措置に関する内容、並びに危機管理面の対応措置に関する内容を提出しなければならない。
ハードコアの物理的対応措置に関連する諸要件
設計、製造、検査、性能認定及び運転中監視に関する諸要件を詳細に示すハードコア要件集を速やかに確定する重要性を、GRPとしては特に指摘しておく。
地震についてEDFは、ASNの命令にも取り上げられた20111110日の意見書でGPRが提示した通り、新たな機器及び構造物の設計や既存の機器及び構造物の検証に際して一律のレベルの採用を提案した。しかしながら、ハードコアに対して想定する地震はその妥当性が証明されねばならず、且つ設計基準ハザードの規模を遥かに超えるとすべきである。従って、EDFの提案は再検討する必要がある。
ハードコアの物理的対応措置の耐震強度の立証方法に関するEDFの提案は、ハードコアに対して求められる信頼度に照らして再検討すべきであるとGPRは判定する。
洪水に関するEDFの提案は総合的に満足できると思われる。但し、2箇所のサイトについては、想定されている海水位を一律で引き上げる必要がある。
より全体的な見地から、GPRは、ヒートシンクや電源の全喪失事態に、或いは地震や洪水以外の極端なハザードから生じるシビアアクシデント状況に対処可能なハードコアの導入の可能性についても十分に検討した。そこで、ハードコアは、極端な地震や洪水に対処するため予定されているもの以外の対応措置も包括できるのではないかと見ている。極端な地震又は洪水に対処するための新たな系統、構造物及び機器に関して選定された諸要件に、特に極端な温度にも耐えられるような要件を必要ならば付け加えるために掘り下げた検討を行う必要がある。
GPRとしては、EDFの書類が充実化され、特にハードコアに属さない機器の故障で生じる影響が加味されることになっている点に留意している。間接的な影響の評価はハードコアを確定する上で重要な要素であることを改めて指摘しておく。
結局、2012630日の書類でEDFが表明したハードコア及び関連要件に関する提案は、20111110日のGPRの意見書を完全には満足していないと判定する。従って、GPRは、高い信頼度で炉心の溶融を阻止できる対応措置によって、またシビアアクシデント時の放射線影響を大幅に低減できる対応措置によって提案を補完し、これに沿ってEDFが提出書類を改訂するよう勧告する。極端なハザード状況下におけるハードコアの機能確保能力を保証する諸要件の明確化又は再検討が必要である。
更に、GPRは、ハードコアの導入を待つことなく、特にASNの命令に基づくその他の検証作業並びに変更工事を実施し、ユニットのハザード強度を高めることの重要性を特に指摘しておく。
付属書
勧告No.1
EDFは、ハードコアについて想定した規模の地震が発生した場合に、反応度を制御する制御棒クラスタの落下を確保するためどのような措置を予定しているか速やかに報告すること。
この勧告は、フラマンビル3EPRにも適用される。
勧告No.2
EDFは、現在運転中の原子炉のハードコアに、蒸気発生器による冷却機能の確保を可能とする措置を導入すること。
勧告No.3
EDFは、安全レビューの一環として現在進行中の評価研究が完了した時点で確定される、部分的又は全面的な炉心溶融時の放射線影響を制限する追加措置(ベント装置のろ過効率改善、原子炉建屋を開放せずに余熱を格納容器外に除去する可能性、基盤の貫通を回避するための措置)の一部を、現在運転中の原子炉のハードコアに導入する可能性について検討すること。
勧告No.4
CPY及びP4クラスの原子炉の燃料建屋(BK)について、EDFは、重量物の取り扱い区域とプール内の燃料貯蔵区域とを分断するため設計時に想定された措置が、ハードコア規模の地震で輸送パッケージが落下した場合でもその機能を確保することを証明すること。
勧告No.5
EDFは、サイトのSND1の表面最大加速度(PGA)及び低周波域での応答スペクトルの形状の妥当性を証明し、必要ならば改訂すること。
勧告No.6
EDFは、ハードコアの新たな構造物及び機器を設計するにあたり、極端な状況を通常の状況と捉え、これら機器の機能要件に適応する基準を採用すること。
ハードコアを構成する(又はハードコアとの「インターフェース」となる)既存の構造物及び機器の設計の検証については、必要に応じ機器の性能認定を含めた従来の決定論的手法を優先すること。
勧告No.7
EDFは、妥当な一律加算が適用され、これに伴う波への影響を統合した洪水指針の諸原則に従って、グラブリーヌ及びブレイエのサイトのハードコアとして採用した海水位を再評価すること。
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1ハードコアに採用した応答スペクトル
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