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IRSNが2013年に実施した調査・研究
シビアアクシデント
SARNETNUGENIAの一元化
2013102日から4日までIRSNが主催した第6ERMSAREurpean Review Meeting on Severe Accident Research)会合には25ヶ国、61の組織から137人が参加した。会議は、欧州委員会の後ろ盾でIRSNが調整役を務めるSARNETSevere Accident Research Network of Excellence)の2回のライフサイクル(それぞれ4年)を決定した。原子炉のシビアアクシデントの現象学及び管理に関する知見、特に劣化炉心の冷却と核分裂生成物の挙動について大きな進歩が紹介された。IRSNが調整役を務めてきたSARNETは欧州の団体、NUGENIANuclear Generation II & III Association)の枠内でその活動を継続している。IRSN2013年に始まった2つの新規欧州プロジェクトを立案した。一つはIRSNが調整役を務める放射性物質の放出低減に関するPASSAMプロジェクト、もう一つはドイツの専門機関GRSが調整役を務める炉心溶融事故の展開シミュレーションと管理に関するASTECソフトウェアシステムの改善を目指すCESAMプロジェクトである。
シビアアクシデント
STEMプログラム:2013年に実施された新たな試験
OECDの後ろ盾でIRSNが実施したSTEMSource Term Evaluation and Mitigation)プログラムは、シビアアクシデント時の原子炉建屋内におけるヨウ素の挙動とルテニウムの1次冷却系内移行現象を研究するものである。
最初の案件については、2013年、塗装鋼の基材に堆積する分子ヨウ素に放射線を長時間(30時間)照射して揮発性ヨウ素を生成する研究に特化したEPICUR施設内での試験が終了し、ヨウ化セシウムのエアロゾルの安定性評価を目指す試験が引き続き実施された。得られた結果とその解釈によって、ヨウ素の挙動に関する理解を深め、より現実的なモデルの開発が可能となる。
ルテニウムについては、IRSNは空気と水蒸気の混合雰囲気内でのSTARTStudy of the Transport of Ruthenium in the primary Circuit)試験キャンペーンに着手した。この試験プログラムの最初の結果は、気体ルテニウムが主に堆積物の再蒸発で得られること、また放出される量は空気と水蒸気の混合雰囲気より乾燥した空気内の方が多くなることを示している。これらの研究は、この種の状況下における支配的なリスクと講じるべき有効な対策についてより的確な情報を提供しなければならない。
シビアアクシデント
ISTP実験プログラムの完了
2013年、IRSNISTPInternational Source Term Program)プログラムの最終報告書を作成した。IRSNの主導でCEAとともに2005年から行ってきたこの実験プログラムは、PHEBUS-PFプログラムの総合成果を掘り下げ、補完することが目的であった。プログラムは欧州委員会の支援に加え、米国、カナダ、スイス及び韓国のパートナーからも支援を受けた。放出とその影響に関する一部の支配的な物理及び化学現象(1次冷却系及び格納容器内におけるヨウ素の移行と物理化学変性、炭化ホウ素の燃料制御棒の劣化、空気による燃料被覆の酸化)に的を絞った試験のおかげで、原子炉の炉心溶融事故の際に環境中に放出される可能性のある放射性生成物の種類や量の評価に重要な材料を入手することができた。IRSNは、これらの成果を通じて、とりわけ、ドイツの原子力専門評価機関(GRS)と共同で開発したソフトウェアASTECの対応する計算モデルを改良することができた。
シビアアクシデント
PRELUDE:劣化炉心への給水効果に関する最初の総括
2013年、IRSNは施設PRELUDEで実施された試験結果全体を総括した。大気圧で行われたこれらの試験は、損傷炉心を模した1000℃の金属デブリ層に送水し、デブリ層内の水の進行(速度及び空間内の均質性)を性格づけして、これらデブリの冷却動力学を数量化するものである。温度、注水方法(上又は下からの注水)、デブリの大きさ、デブリ周辺のバイパス箇所の存在など幾つかのパラメータの影響が検討された。この最後のパラメータは、(米国)スリーマイル島原子力発電所の事故の際に見られた状況、すなわち損傷箇所の周りをほぼ無傷の燃料棒が取り囲んでいた状況を模している。PRELUDEプログラムの結果の解釈は、バイパスが存在すると、冷却効果が改善されなくなる注水流量の分岐点が存在することを特に示している。並行して、IRSNは実験施設PEARLの運用準備を完了した。この実験施設はPRELUDEの後継施設で、より大きな規模、またより高い圧力(10 bars)での試験を可能とする。
シビアアクシデント
確率論的安全評価を外部ハザードに拡張
確率論的安全評価(PSA)によって、シビアアクシデントのシナリオをその確率及び影響に応じて識別し、序列化することが可能である。福島の事故は、こうした評価の際にハザードを考慮して、施設の安全強化に関する教訓を引き出すのが得策であることを示した。このような経緯から、「拡張」PSAの開発及び使用に関するプラクティス調整プロジェクトASAMPSA-Eが欧州委員会によって選定された。IRSNが調整役を務めるこのプロジェクトには欧州の28のパートナーが参加しており、日本及び米国の機関も関係している。「拡張」PSAは、原子力発電サイトに存在する設備(原子炉、使用済燃料貯蔵建屋)を襲う内部及び外部ハザード(気象学的不測事態、地質学的不測事態、産業リスク、等々)を考慮することで、これらの設備全体に関連するリスクの評価を目指す。ASAMPSA-Eプロジェクトは20137月に開始した。同時に、IRSNは、フランスの発電用原子炉の頑強さを改善する目的で、IRSN自体の確率論的評価で取り上げるリスクの範囲を拡大する取組みを継続している。
臨界リスク
PRINCESS、臨界リスクに関する実験の国際提携プロジェクト
(コート=ドール県)ヴァルデュックのCEA研究センターの個別施設010の全面的な刷新を必要としたMIDASプロジェクトを断念した後、PRINCESSProject for International Neutron physics and Criticality Experiments for Safety)プロジェクトの開始が決定された。このプロジェクトの目的は、臨界リスク、中性子工学及び線量測定法の分野で研究プログラムに参加したり、独自の研究プログラムを実施したりするための実験手段をIRSNに提供することにある。エネルギー省(米国Doe)、日本の原子力機関(JAEA)、物理・電力工学研究所(IPPE)及びクルチャコフ研究所(ロシア)との最初の一連の技術会議が開催され、これらの国々の実験施設の利用について話し合われた。これらの実験施設を利用することで、IRSNは、これまでは実質的にヴァルデュックの施設での実験に頼ってきた研究を継続することができる。
火災
電気ケーブル火災に関する実験の分担
2013103日、IRSNはケーブル火災に関する「技術デー」を(ブーシュ=デュ=ローヌ県)カダラーシュで開催した。この催しには、原子力及び非原子力分野に従事する14の企業から60名の火災専門家が集まった。技術デーは、ケーブル火災関連リスクについての情報を交換し、得られた研究成果を共有し、火災に特化されたIRSNの実験施設を見学する機会となった。ケーブル火災は、ケーブルの引火、火の伝播及び燃焼生成物に関する研究対象となっている。IRSNは、特にOECDの後ろ盾で実施されているPRISME 2国際プロジェクトの枠内で、複雑で且つ安全面で重要なこれらの問題に数年前から取り組んでいる。IRSNでは、技術デーに参加していた一部の企業も含め、この案件について直ぐに共同研究することに関心を示したパートナーを加えて研究を継続し、密閉・換気環境下でのケーブル火災の現象学の理解を深め、事業者が選定した設計規則の評価を改善する意向である。
火災
国際プログラムPRISME 2の継続
PRISME 2プロジェクトの「鉛直方向の煙の伝播」と命名された2013年の第1回試験キャンペーンの解析は、原子力施設の防火区画化装置を損傷させる恐れのある低振動数で極めて大きな振幅を持つ予期しない圧力振動現象を中心としたものであった。種々の電気ケーブル及びキャビネットを絡めた第2回キャンペーン、「ケーブル火災の拡散」の試験が実施された。この試験は密閉・換気環境下ではこれまでにない珍しいもので、ケーブルがその耐火分類と直接関係なく燃焼することを特に明らかにした。これらの実験は、密閉・換気環境下では材料の燃焼が一般的な法則に従わないことを確証している。PRISME 2国際プロジェクトでの検討対象は開口部を通じて連絡する上下区画間の煙の伝播、水平方向のケーブル敷設路に沿った火の伝播、電気キャビネットからその上を通るケーブル敷設路への火災の伝播、そしてスプレイ系の性能である。OECDを後ろ盾に展開されているこのプロジェクトは、5年の期間で20117月に開始した。フランスのパートナーはEDFと軍備総局(DGA)で、ベルギー、カナダ、フィンランド、ドイツ、日本、スペイン、スウェーデン及び英国から支援を受けている。
燃料
CIPプログラムの今後の試験用にIRIS測定ユニットの運用を再開
10年の休止を経て、測定ユニットIRIS(画像・分光分析放射線設備)がCABRI施設内で運用を再開した。これは、CIPプログラムの試験準備における重要なステップである。試験は、反応度投入事故を表す出力上昇を燃料棒に加えるものである。試験の都度、試験装置内に縦方向に挿入された燃料棒はCABRI炉からIRISユニットに移され、構造的な変化(燃料ペレットの変位、燃料被覆の変形及び破損、燃料断片の飛び出し、等々)について分析される。IRISユニットの運用再開は、測定精度を高めるための改善策を提供する機会となった。具体例を挙げると、X線束が透過した燃料棒の高品質な画像及び断層像の実現に好都合な安定した線量率を提供できるよう、高エネルギーで高密度のX線源を提供する加速器CadOrionが開発された;画像データの収集システムについては、ハードウェアとソフトウェアの改良が数回に亘って加えられている;画像センサの調整、最適化(シンチレータの選定、X線束のアライメント、コリメータ開度)も実施され、ガンマ線分光分析システムは画像の質を改善するために改良、調整された。
燃料
使用済燃料の脆化に関する新たな知見
独創的な技術を適用し2011年に始まった実験プログラムの過程で、IRSNは、2013年、使用済燃料棒の被覆が(マンシュ県)ラ・アーグの使用済燃料再処理工場のプールに投入された時点で脆化する際の物理パラメータの組合せを究明した。試験の結果、とりわけ温度に左右される限界機械応力を超えると、原子炉内で燃料被覆が吸収した水素によって水素化ジルコニウムのプレートが形成され、その偏りが被覆の機械強度を脆化させていたことが明らかとなった。
高経年化
原子炉容器鋼材の挙動のモデル化改良
照射環境下における原子炉容器構成材料の経年影響を更に深く理解するため、IRSNは原子スケールのモデル化研究を展開している。原子炉の運転期間が40年超に延長される可能性を見通した場合、炉容器の取替ができない限り、その材料が十分な機械的性質を維持できるか確認する必要がある。このような性質は材料内の原子の配列にとりわけ左右される。IRSNが着手した最初の研究は、炭素など鋼材の一部の構成要素が中性子によって生じた欠陥とどのように相互作用するかの評価を目的としている。研究作業は、リヨンのINSA(国立応用科学院)をはじめとする大学の研究チームと共同で進められている。2013年には、異質な機械応力場の中で炭素原子が拡散していくために乗り越えるべきエネルギーバリアの新たな評価方法が開発された。
閉じ込め
ECOBA:最初の測定結果
IRSNの主導で開始し、全国研究機構(ANR)が資金を提供するECOBA(鉄筋コンクリート構造物の閉じ込め評価)プロジェクトは、フランスの加圧水型炉(PWR)の二重格納容器が確保する閉じ込め機能を評価する研究である。このプロジェクトの目的は、代表的な一体構造物高さ2.4 m、幅4 mの鉄筋コンクリート模型を使って、事故時にコンクリートに加えられる熱機械荷重で発生する亀裂からの漏れを評価することである。この研究の独創性と利益を考慮し、ANRは「white program(公開自主研究プログラム)」の枠内でこのプロジェクトを支援する決定を下した。最初の模型のコンクリート打設が、このプロジェクトの実験部分を担当する(ロアール=アトランティック県)ナント国立高等工業学院で20133月に実施された。次いで、コンクリートに制御された割れを実現するため、模型には引張り力が加えられ、こうして割れを来たしたコンクリートからの乾燥空気漏れの測定が行われた。このプロジェクトの成果は、事故状況下での構造物全体の挙動をシミュレーションするモデルの検証に役立つはずである。
 
 
 
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