有限会社アール・エス・シー企画 フランス語はじめヨーロッパ言語など科学技術専門の翻訳会社 -- 2009年のフランス原子力発電所全体の安全に関するIRSN年次報告書(2011年1月4日公開)
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IRSN(放射線防護・原子力安全研究所)が2009年のフランス原子力発電所の安全に関する年次報告書を発表
原子力施設の事象がメディアで取り上げられる度に、フランスの原子力安全の現状という問題が必ず公開討論の表舞台に戻ってくる。
IRSNは、本日、EDFの発電所の安全の推移に関する「冷静な」判断材料を提供する年次総括報告書を発表した。この報告書は、フランスの原子力発電所の安全状態についてIRSNが絶えず行っている技術分析の結果を、安全問題の教育や説明に配慮しながらまとめたものである。
2009年には、重大事象(大半は大きな影響がなかった)の原因に占める「ヒューマンファクタ」が、防止努力を重ねてきたにも拘わらず、再び際立った割合を示す(85%)ことになった。施設や運転規則の複雑化と絶え間ない改良、そして特に「ユニット停止」にともなう作業の際に運転員を圧迫する著しい組織面の拘束、これらが原子力発電所で発生する安全事象又は放射線防護事象の一因として特定されたファクタである。
一方、放射線防護に関する進歩は止まるところを知らず、個人線量は低下の一途を辿っている点を特に指摘する必要がある。しかしながら、保守作業現場で行われる従来のX線検査の際に、特筆すべき事象が数件発生している。状況が違えば、この種の事象は作業員の被ばく事故という重大な結果をもたらしていたはずである。
特筆すべき安全事象の中から、報告書は、原子炉の安全諸系統に冷却水を供給する取水口が大量の野菜で突然塞がれたことが原因で発生したクリュアス発電所サイトのユニットの「コールドソース」喪失事象を紹介している。この事象は、EDFのチームが高い職業意識を持って処理にあたった。この事象により、国の緊急時体制が動員されている。これは、自然ハザード関連リスクを過小評価しないことが重要であるという、IRSNの見解をあらためて確認させた。
2009年には、安全上重要な機器又はコンポーネント、特に蒸気発生器伝熱管に関わる一般異常が数件発生しており、報告書はこれらに関するIRSNの分析を取り上げている。
報告書は、原子力発電所内の安全や放射線防護に関わる案件を網羅的に示すことを意図するものではない。施設の安全上重要な一部のパラメータの変化傾向を明らかにすることで、運転中の発電所全ての安全性を総合的に評価している。その上で、安全の向上を常に追求するという観点から、特に教訓を多数内包する事象や事故を10数件取り上げている。引用する各案件について、報告書はIRSNが行った分析の結果を詳述している。
わが国には運転中の動力炉58基と、原子力発電事業関連工場や廃炉となった原子炉を含めて約70を数えるその他の原子力施設が存在する。IRSNは、事業者から提出される事象報告書の体系的な活用により、全ての原子力施設の安全に関する絶え間ない技術分析に多大な資源を投入してその使命を果たしている。こうした分析は、IRSNが安全向上のため優先すべきと判断する研究や調査の方向性の決定に貢献しており、特に、定期的な原子力施設の安全再審査の際に原子力安全機関の要求で行われる専門家評価作業の助けとなっている。
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