有限会社アール・エス・シー企画 フランス語はじめヨーロッパ言語など科学技術専門の翻訳会社 -- 加圧水型炉(REP)過酷事故時の1次冷却系内のよう素(気相)の挙動
有限会社アール・エス・シー企画  お問合わせはお気軽にどうぞ TEL 03-3227-3676
トップページ

  トップページ > 最新情報
 
CHIPプログラム
[加圧水型炉1次系内のよう素化学]
目的
加圧水型炉(REP)で発生する過酷事故(炉心溶融)の場合、よう素は住民にとって最も危惧される放射性物質の一つである。1次冷却系が破断すると、よう素はその揮発性ゆえに炉心からほぼ全量放出される。したがって、原子炉の格納容器まで運ばれる可能性がある。
炉心溶融事故の際の環境への潜在的な放出物を評価するためには、1次系内並びに格納容器内のよう素の挙動を緻密にモデル化することが必要である。
CHIPプログラムは、格納容器内に流入する気体よう素の量を特定し、炉心1次冷却系内でのよう素の物理化学変化に関する実験データを提供するという明瞭な目的を持っている。
これらのデータは、IRSNで開発された計算ソフト「ASTEC/SOPHAEROS」をはじめとする過酷事故デジタルシミュレーションツールに組み込むための物理化学モデルの開発と妥当性検証に使用される。CHIPは、REPの過酷事故時の環境放出物の評価に関する不確実性レベル低減を目指す、「ソースターム」と命名されたよりグローバルな国際プログラムに盛込まれている。
背景
PHEBUS PF試験は、かなりの量の気体よう素が格納容器に流入することを明らかにした。揮発性よう素の存在は、よう素を巻き込む様々な反応の速度が制限され、したがって化学的「不均衡」が化学反応速度によって条件設定されることに原因があると考えられている。
過酷事故計算ソフトASTEC/SOPHAEROSに限定的で妥当性の検証が行われていないモデルを導入したところ、当初の結果から、1次系内に存在するよう素含有化学種の特定に化学反応速度が大きな役割を果たしていることが明らかとなった。
実験と並行して、よう素の挙動に影響を与える主な反応の熱化学反応速度パラメータを高精度で計算するため、定量化学ツールの開発も進められている(アブイニシオ計算)。しかしながら、反応が多いため問題は複雑である。例えば、4元素(セシウム、よう素、酸素、水素)の単純系をとっても、モデル化では約50通りの反応を想定することになる。すなわち、約100種類の化学反応速度定数を決定することになる。
CHIP実験プログラムは、こうして開発された化学反応速度モデルの妥当性検証に必要なデータの入手を可能とするはずである。このプログラムは、ソースターム国際プログラムに組入れられている。
方法論
CHIPプログラムは、1次系破断箇所での揮発性よう素の存在を左右する化学種を特定すると同時に、関連する化学反応の速度定数や熱力学的定数を明確にすることを目指している。下記の3つの追加設備がこのプログラムの基本となる:
·    現象ラインLP);これは、最終的な気体よう素量に関与し得る化学元素の特定を専門とするプロトタイプ試験ベンチである。このベンチは原子炉1次系の高温箇所(700℃、「ホットレグ」)での破断ケースだけでなく、低温箇所(150℃、「コールドレグ」)で発生する破断ケースも再現する。REPの系統を模倣する配管は燃料、燃料制御棒又は構造物の劣化生成物の代表的な化学元素を10種類まで取り込む反応系を受け容れることができる。CHIPプログラムのLPIRSN(放射線防護・原子力安全研究所)の(ブーシュ=デュ=ローヌ県)カダラーシュ・センターに設置されている。
·    分析ラインLA);これは、様々な反応系について反応速度や熱力学のデータ選定を専門に行う。これらの反応系は、よう素、水素及び酸素を含む3ないし4種類の元素の濃縮搬送ガスに限定される。このラインは下記の2つの設備で構成される:
一つは、グルノーブルのCNRS/SIMaP実験所に設置されている高温質量分光器(SMHT)に接続された熱反応炉である。
もう一つは、「火炎技術」を採り入れている。この設備は、リール1大学のCNRS PC2A実験所(燃焼プロセス・大気物理化学実験所、CNRS-UMR 8522)と共同で使用されている。火炎技術は、SMTHの測定環境である真空状態や堆積問題から解放されたところで化学反応速度データを入手するために利用されている。
この2つの設備を使って得られる結果は、とりわけ、化学反応速度モデルに圧力を考慮することの妥当性の検証を可能とするはずである。
上述の2つのラインは補足データを提供する:
CHIP LAは、物理化学条件全般に亘り高精度の測定結果を提供するため、限られた数の反応物質(よう素、水素、酸素を含め最大4種類)だけを介在させるのに対して、CHIP LPは、投入される化学元素に応じて気体やエアロゾル状のよう素の定量測定を可能とする。CHIP LPは影響力を持つ元素をこうして選定するため、どの元素をCHIP LAで検討するか道筋を定めてくれるはずである。
 

 

 

 

 

印刷
Copyright© 有限会社アール・エス・シー企画 All Rights Reserved.