Fontenay-aux-Roses、2011年9月13日
原子力安全機関理事長殿
IRSN意見書: 2011-394号
案件: VD3-900安全再評価
参考: [1] 2011年6月20日のASN付託書CODEP-LYO-2011-034935、「ビュジェイ原子力発電所:運転継続」
[2] 2011年4月26日付EDF報告書D5110/NT/11114、「ビュジェイ原子力発電所2号機の第3回10年総点検に伴う安全再評価の総括報告書」
[3] IRSN DSR報告書261号、「第3回10年総点検の一環としての900 MWe原子炉の安全再評価報告書」
[4] 2009年7月1日付ASN書簡DEP-PRES-0077-2009、「第3回10年総点検後の900 MWe原子炉の運転継続の一般的側面に関するASNの見解」
[5] 2010年7月20日のIRSN意見書2010-34号
[6] 2011年2月10日のIRSN意見書2011-62号
[7] 2009年9月2日のIRSN DSR意見書2009-283号
上述[1]の原子力安全機関(ASN)の付託書に基づき、IRSNはビュジェイ原子力発電所2号機の第3回10年総点検(VD3)に伴う安全再評価の結論(上述[2]の報告書)を審査した。
ビュジェイ原子力発電所2号機の安全再評価の背景
ビュジェイ2号機の「VD3」安全再評価は、(フェッセンハイム及びビュジェイのサイトの6基の原子炉で構成される)CP0クラスと(7箇所のサイトの28基の原子炉から成る)CPYクラスとに分かれる900 MWe原子炉全体のVD3(VD3 900)安全再評価という、より一般的な枠組の中で行われている。
2002年から2008年にかけて実施されたVD3 900再評価を通じて、900 MWe原子炉(CP0及びCPYクラス)の包括的な評価を実施し、これら原子炉の安全レベルを維持又は改善するため必要な変更措置を確定することができた。
こうして、ビュジェイ2号機のVD3安全再評価の総括報告書はVD3 900再評価の結論を再記するとともに、ビュジェイサイト或いはCP0クラスのこの原子炉の現況並びに特異性を補足している。
VD3 900安全再評価の包括的側面に関する評価
VD3 900安全再評価の枠内でEDFが行った包括的評価についてIRSNが2002年から2008年にかけて実施した審査結果は、以下をテーマに数回に亘り開催された原子炉専門家常設グループ(GPR)の会議の折に提出されている:
· VD3 900の審査方針(2003年6月)、
· シビアアクシデント(2004年12月及び2005年3月)、
· レベル1及び2の確率論的安全評価(2005年2月)、
· 閉じ込め(2005年3月)、
· サイト内の火災及び爆発に関するリスク(2005年3月)、
· 下記に関するその他のVD3 900の審査(2005年3月):
− 内部及び外部ハザード、
− 事故及びその放射線影響の評価、
− 諸系統及び土木構築物の設計。
· 経年劣化の管理(2003年12月及び2006年5月)。
更に、VD3 900安全再評価の範囲外とされている一部のトピックも(原子炉、SPN)専門家グループの個別会議で取り上げられている。例えば、再循環サンプの閉塞リスクや原子力耐圧機器である。
「VD3 900安全再評価報告書」について検討した2008年11月20日の会議では、IRSNは以下に関する独自の評価結果を報告した(上述[3]の報告書):
· 当初設定された目標に照らしてEDFが行った分析、
· これらの分析を踏まえて予定されている変更措置、
· 分析結果並びに導入された変更措置に由来する新たな「VD3 900」安全基準集と関連要件。
第3回10年総点検後の原子炉の運転継続について断を下すため、ASNは、2009年7月、VD3 900安全再評価の包括的側面に関するASN見解と、900 MWeクラスの包括的又は各原子炉に特有の提供すべき追加情報をEDFに通知した(上述[4]の書簡)。こうしてASNが行った要求は、「VD3 900安全再評価報告書」GPRの中でEDFが約束した事項を補完している。大多数のASNの要求事項及びEDFの約束事項には、該当する原子炉の第3回10年総点検停止に見合った猶予期限が設定されていた。対応措置は事業者が施設内の各原子炉のVD3完了時点で提出すべき再評価総括報告書(RCR)に組み込まれ、妥当な結論であると認められた包括的側面を補完することになっている。
事実、各RCRはVD3 900安全再評価の包括的側面を取り上げ、該当施設に関する評価の結論や必要な変更措置を改変しそうな、サイト又は原子炉に関する特異性をテーマ別に特定している。更に、各RCRには特に以下が添えられている:
− ユニット適合審査(ECOT)に関する点検結果;900 MWeクラスに共通するプログラムについては、2007年にIRSNが評価を行っている。
− 2008年にIRSNが評価を行った追加調査プログラム(PIC)に関連するサンプリング検査結果。
− 施設の経年劣化の管理を行うため事業者が講じた措置をリストアップする運転継続適性文書(DAPE);文書の構成や内容については2008年にIRSNが評価を行っている。
VD3 900安全再評価の包括的側面に関する評価の継続
VD3 900安全再評価総括報告書に関するIRSNの最初の審査は、900 MWeクラスとして最初にVD3を迎える2009年のトリカスタン1号機の報告書であった。
上述[5]の意見書に記されているように、IRSNは、この原子炉に固有の側面に加えて、EDFから提出された追加情報の審査も実施した。この追加情報は、特にVD3 900再評価の包括的側面に関するもので、「VD3 900再評価報告」GPRの際のEDFの約束事項とASNの要求事項に対応している。
IRSNはフェッセンハイム1号機のRCPの評価も実施した。上述[6]の意見書に記されているように、IRSNは、トリカスタン1号機に関するRCPの評価以降にEDFから提出された追加評価を分析する一方で、他方ではCP0クラスに固有の評価を分析した。
従って、上述[5]及び[6]の意見書で、IRSNは分析、勧告、意見を以下のテーマ別に取り上げている:
· VD3 900安全再評価の包括的側面、従って900 MWeクラスの原子炉全体に適用される。
· 意見書[5]ではトリカスタン1号機又はトリカスタンサイト全体に固有の側面、更に意見書[6]ではフェッセンハイム1号機又はフェッセンハイムサイト全体に固有の側面。
VD3 900安全再評価の包括的側面についてEDFが提出した追加情報の評価
念のため、VD3 900安全再評価の包括的側面で採用された技術トピックは下記の通りである:
Ø 内部及び外部ハザード、更に特定すると:
· 内部洪水並びに高エネルギー配管破断(RTHE)、
· サイト内に起因する爆発、
· 火災リスク:(CPYクラスの)「火災」PSA並びに火災防護工の裕度の検証、
· 耐震検証アプローチ、
· 気象ハザード:雹、強風、竜巻、森林火災、炭化水素膜の漂流、
· 共通モードの外部ハザードに対するユニット及びサイト自立性。
Ø 事故及びその放射能影響の評価、特に:
· 1次系の低温加圧リスク、
· 安全注入系(RIS系)の受動故障、
· 伝熱管破損(RTGV)に伴う蒸気発生器の溢水リスク、
· シビアアクシデント、
· レベル1のPSAの更新、
· レベル2のPSA、
· 事故後状況での閉じ込め、
· 格納容器の挙動、
· 閉じ込めから見た換気/ろ過系の適合性、
· 設計外状況及び極端な状況(H及びU状況)で必要な機器の作動可能性、
· 「状態重視アプローチ(APE)」計装−「事故後モニタリング(SPA)」情報。
Ø 土木構造物及び系統の設計:
· 土木構造物の設計の検証、
· 放射能測定系(KRT系)の動作、
· 燃料プール冷却系(PTR系)の信頼性、
· 安全注入系(RIS系)の機能的容量、
· 再循環機能の信頼性強化。
VD3 900安全再評価の包括的側面に関する限り、フェッセンハイム1号機のRCRの評価でIRSNが行った分析(意見書[5])がビュジェイ2号機のRCRの評価に適用される。このため、IRSNはフェッセンハイム1号機のRCRに関する評価の際の勧告或いは意見の対象となった要素を付属書1に再記している。
これらのIRSNの勧告並びに意見は、下記の項目に関するVD3 900安全再評価の包括的側面に関係している:
· サイト内に起因する爆発、
· 共通モードの外部ハザードに対するサイトの自立性、
· レベル1の確率論的安全評価、
· シビアアクシデント、
· 事故後状況での閉じ込め、
· 格納容器の挙動、
· 閉じ込めから見た換気/ろ過系の適合性、
· 燃料プール冷却PTR系の信頼性、
· 運転継続適性書類、
· 格納容器及び土木構造物の内部表面反応(RSI)リスク、
· 900 MWe原子炉容器のフルエンス。
更に、IRSNはフェッセンハイム1号機のRCRの評価以後にEDFから提出された追加評価を審査した。この結果、IRSNは付属書1の勧告R1と付属書3の見解O 6.1及びO.8を提示することになった。勧告R1はレベル1の確率論的安全評価の更新に関するもので、見解O 6.1とO.8は、それぞれ、格納容器の挙動と燃料プール冷却PTR系の信頼性に関するものである。
ビュジェイ原子力発電所2号機の安全再評価総括報告書の評価
先述[2]のビュジェイ2号機RCRは、2010年2月27日から2010年11月5日まで続いたこの原子炉の第3回10年総点検停止の後、EDFにより作成された。
このビュジェイ2号機について、IRSNは特に下記の審査を行った:
· 実施された評価とこの結果予定または実行された変更。
· 第3回10年総点検(VD3 900)の際の900 MWeクラス原子炉の安全再評価に関連する包括的検討の結論の考慮。
· ユニットの適合審査の結果。
· ビュジェイ発電所事業者による経年劣化管理プロセスの考慮。
ビュジェイ2号機VD3再評価に固有の項目について、付属書2及び3に記されるIRSNの見解又は勧告が必要となる検討案件は下記の通りである:
· サイト内に起因する爆発
IRSNは、ビュジェイ2号機に関する内部爆発リスクの評価方法の適用が総合的に満足できると判断する。しかしながら、ビュジェイ2号機で講じられている幾つかの実践的措置は満足できるとは言えない。これらの点については勧告R 7.1及びR 7.2で取り上げる。
· 火災
「VD3 900報告書」に関するGPRの会議終了後に出された結論と同様、IRSNは、CP0クラスに採用された火災リスク評価アプローチの適用が満足できると判断する。しかしながら、このクラスにその結果講じられた幾つかの実践的措置は満足できるとは言えない。この点については勧告R 8で取り上げる。
· 共通モード外部ハザードに対するユニット及びサイトの自立性
ビュジェイサイトで導入されているいくつかの措置は満足できるとは言えない。特に、サイトのヒートシンク喪失時のASGタンク再給水について、IRSNとしては、ビュジェイ2号機のRCRがビュジェイ安全報告書(RDS)、VD3版に記されている措置と相反する措置を提示していることを指摘しておく。これらの点については勧告R 9.1、R 9.2及びR 9.3で取り上げる。
· 気象ハザード
IRSNは、気象ハザードに関する評価の状態とビュジェイ2号機のRCRに記されている措置との間の変化を指摘しておく。この点については見解O 11で取り上げる。
· 換気/ろ過系の閉じ込め適合性
IRSNは、ビュジェイ2号機のRCRとEDF報告書「ビュジェイ原子力発電所の動的閉じ込め範囲の定義」との間に矛盾が存在することを指摘しておく。この点については見解O 12で取り上げる。
· 燃料プール冷却PTR系の信頼性
CP0クラスの燃料プール冷却系の特異性に関する検討から、IRSNとしては、ビュジェイサイトについて幾つかコメントする必要がある。この点については見解O 13.1、O 13.2及びO 13.3で取り上げる。
· 安全系統、すなわちRIS系及びEAS系の再循環機能の信頼性強化
IRSNとしては、この機能について、幾つかの包括的な適合違反がEDFから幾つか届け出されていることを指摘しておく。ビュジェイ2号機のRCRは審査中のこれらの適合違反に触れていない点に留意している。この点については見解O 14.1及びO 14.2で取り上げる。
結論
900 MWeクラスの原子炉の第3回10年総点検(VD3)に伴う安全再評価の一環としてEDFが行った包括的評価並びにその結果予定もしくは実施された変更措置に関する審査を終え、IRSNとしては、VD3終了後のこのクラスの原子炉に適用される安全要件集が、この再評価のために設定された目標から見て満足できることをその報告書[3]で再確認した。
CP0クラスの原子炉として最初にVD3を迎えたフェッセンハイム1号機の安全再評価総括報告書の審査で、IRSNは、この施設の特異性を考慮しつつ事業者によるこの安全要件集の適用状況を検討した。IRSNは、包括的評価の結論やこれを基に採用された措置を問題化するようなビュジェイ2号機に固有の特異性は一切ない点を指摘しておく。特に、VD3停止後更に10年に及ぶ運転継続を目的とするビュジェイ2号機の運転再開条件に関するIRSNの評価は、試験結果や経年劣化への配慮から見て、指摘事項を必要としない。但し、福島の事故を受けて実施された安全追加評価から今後引き出される結果については別問題である。
IRSNは、この意見書の付属書に記されている見解及び勧告に従って、900 MWeに共通する幾つかの評価及び措置の実施、そしてビュジェイに固有の幾つかの違反の処理を完了する必要があると判断する。
総局長に代わり
JEAN COUTURIER
以降、付属書1(VD3 900安全再評価の一般的側面に関する勧告)、付属書2(ビュジェイ原子力発電所固有の側面に関する勧告)、付属書3(VD3 900安全再評価の一般的側面に関する所見)、付属書4(ビュジェイ原子力発電所に固有の側面に関する所見)が続く。