IRSN(放射線防護・原子力安全研究所)の情報誌「Repères」第7号、2010年10月発行
論説
Jacques Repussard、IRSN所長
低線量の影響を探る
フランスで適用されている国際的な放射線防護システムは、被ばく線量とガン発症リスク過剰との間には「閾値のない一次的な関係」が存在するという考え方に基づいている。この考え方は、極低い線量値の設定に繋がることから、極めて安全側である。しかし一方では、影響のない線量は存在しないと思わせるため、不安を招く考え方でもある。「低線量」の問題はしばしば社会的な論争の的となっており、放射線防護に多額の費用が投じられている。然るに、この閾値のない一次的な関係は、極低い被ばくレベルについては科学的に立証されていない。それは、より高い被ばくレベルで確認された一次性が低線量にまで拡張するという仮説から生まれている。ガン以外の影響の問題は度外視されている。欧州諸国はそれぞれの努力を結集し、低線量の影響に関する疑問に答えようとしている。これこそ、IRSNとCEAが主催し、米国や日本の研究者と協力することになっている欧州研究プラットホーム、Melodiの大望である。
目次
−ハイライト
移動実験室によって被ばく者をその場で救護可能
−出来事&展望
トリキャスタン・サイトの調査:地下水から発見されたウランはどこから来たのか?
−討論
若者に対する放射線防護の啓蒙方法
−海外ニュース
放射能緊急事態:フランスの専門家がその知識を輸出する
−社会に向って
「社会が放射線防護に溶け込むのではなく、放射線防護が社会に溶け込むべきである」
−課題と戦略
職業倫理監視委員会
−ガバナンス
放射能モニタリングのステップ
特集記事
低線量の健康影響に関する研究はどの程度進んでいるのか
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