有限会社アール・エス・シー企画 フランス語はじめヨーロッパ言語など科学技術専門の翻訳会社 -- フランスのエネルギー転換法(公開日:2015年9月28日)
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グリーン成長を目指すエネルギー転換法案
2014年、政府はグリーン成長を目指すエネルギー転換法案を提出した。この法案の第VI節には「原子力安全の強化と市民への情報提供の促進」が盛り込まれている。法案は、20141014日、国民議会の第1読会で採択され、2015年初頭には最終的に採択されるはずである。
条文は、国内の発電量に占める原子力の比率を低減し、2025年にはそれでもかなり高い50%とすることを謳っている。フランスは今後も世界有数の原子炉保有国であり続けるわけで、新たな原子炉に適用される諸要件を参考に、また福島の事故の教訓を取り入れながら安全を強化する必要がある。
ASNでは、条文がそのまま最終的に採択されることを決めつけているわけではないが、この法案が原子力安全及び放射線防護の分野で幾つかの前進を導入しており、市民に対するこれらの分野の情報提供を強化していることを確認し、満足している。
法案は特に以下の点に留意している。
透明性と市民への情報提供の強化
地方情報委員会(CLI)は、少なくとも年に1回、公衆が参加できる会合を開催すること、また国境沿いの県内に立地する基本原子力施設(INB)のCLIには隣接国の代表者を含めることが定められている。更に、CLIは、施設の通常運転やそこで起こりうるINES分類の対象となる重大事象を理解するため施設の見学を要求することができるようになる。
INBの近隣住民は、事故時の安全措置やとるべき行動についての情報を要求しなくても定期的に提供され、その費用は事業者が負担する。こうした住民への情報提供業務は、定期的にCLIに示される。
40年を超える原子炉の運転継続に関連する課題から、運転開始から35年後に実施される原子炉の安全レビューの際に事業者が提案する措置は公聴会の対象となる。
最後に、放射線リスク分野の情報を入手する公衆の権利は、原子力施設が抱えるリスクや欠点の全体に拡大される。
INB許可制度の変化
INBの変更は、その課題や規模に応じて、以下の対象となることが定められている:
·         公聴会実施後、建設許可(又は解体許可)デクレの変更
·         公衆参加の対象となる場合があるASNによる許可
·         事業者からASNへの届出
この段階的制度によって、施設や施設の変更がもたらすリスク及び不都合に適応する処理が可能となるはずである。
INBの運転終了及び解体制度の変化
法案は、環境法典に即時解体の原則を採り入れることで、運転終了後のできるだけ速やかなINBの解体を重視している。下記の事項を以前より更に明確に区別し、解体の手続きを刷新している:
·         事業者の責任の範疇で、ASNへの届出が必要な施設の運転終了
·         施設の解体。解体方法は、事業者が提出する書類を踏まえ国によって承認されなければならない。
施設の運転終了は、この施設が数年間運転されなかった場合、強制的に宣告されることもある
ASNの管理手段及び制裁権限の強化
法案は、ASNの管理手段並びに制裁権限を強化するためオルドナンスによる法律制定の権限も定めている。
特に、ASNは、
·         悪意行為に対する放射線源の安全確保を目指す措置を課して、これらの措置の円滑な実施を監視できる。
·         行政罰金及び罰金強制を課し、差押、先取控除又は供託、及び和解に取り掛かることができる。
これらの行為は、審査機能と判定機能の分離原則を遵守するため、ASNの中に設置される制裁委員会によって実施される。
·         ASNの検査官が実施する検査を、事業者、その納入業者、サービス業者又は下請業者がINBの外で行う安全上重要な活動にまで拡大できる。
·         産業リスク(化学リスク、非放射性廃棄物、爆発環境)に関連する一部の規制をINB内で点検し、事業者の負担で第三者専門家鑑定を実施させることができる。
·         原子力安全及び放射線防護のニーズに対する研究の適応化を監視することができる。
原子力安全及び放射線防護の検査機関の明瞭化
ASN原子力安全及び放射線防護の管理を担当している。
法案は、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)の存在と使命を環境法典に組み入れている。法案は、ASNIRSNの技術的支援を受けており、こうした専門家評価活動が研究活動で支えられることをあらためて指摘している。
更に、ASNが「この技術支援に関するIRSNの戦略的決定を方向づける」こと、そしてASN委員長がIRSN理事会の正構成員であることを示し、ASNIRSNとの関係を明白にしている。
法案はIRSN意見書の公開原則にも言及している。
旧原子力サイトの監視強化
法案は、解体後指定解除されたINBが操業していた土地の取得者がその場所で過去に行われていた活動について情報を提供されるよう定めている。
更に、放射性物質で汚染され環境へのリスクを抱えるサイトについては、住民保護を目的とする一般利益のための地役の対象とすることが可能である。
結論
グリーン成長を目指すエネルギー転換法案の審議が議会で継続している一方で、ASNでは、法案に盛り込まれている現状の規定によって、原子力安全や放射線防護の管理をより効率的で、課題に適応化する方向に改善できると見ている。またASNは、透明性や公衆への情報提供が強化されることにも満足感をもって注目している。ASNは、将来の法律の施行条文について政府から諮問を受けることになっている。
更なる詳細については下記のPDFファイルをご覧ください:
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