I. ドクトリン
ドクトリン・ノートのコンセプト
1)ドクトリン・ノートの定義
真実であると確信する考え方全体で、これを通じて事実の解釈を提供し、行動を方向づけたり命令しようとする(「ル・ロベール」より)
IFSドクトリン・ノートは、2007年8月の刊行以来IFSフードスタンダード(食品基準書)第5版に加えられた解説の全てを網羅している。これらの解説は基準書の形式(言語上の変更)或いは実体(解釈、更新、明確化)に関係している。いずれも認証機関、製品納入業者並びにその他あらゆるIFSユーザーが対象である。ドクトリン・ノートの内容は全てIFS作業部会の決定に準拠している。
2)ドクトリン・ノートの目的
1) IFSスタンダードの、言語上の問題と関係のない解釈材料全てをまとめる。
2) IFSスタンダードの言語上の変更全てをまとめる。
3) IFSスタンダードのレイアウト変更や内容の解釈を次版のIFSフードスタンダードのためのたたき台として使用する。
4) 認証機関、製品納入業者並びにその他のIFSユーザーのために共通の解釈基盤を確立する。
3)ドクトリン・ノートの適用開始日
本ドクトリン・ノート集は2008年8月15日から適用される。
4)ドクトリン・ノートの改正
本ドクトリン・ノート集は、IFS作業部会並びにIFSレビュー委員会によって必要に応じて、また少なくとも年に一回定期的に見直される。
1:KO要件のN/A評価
解説:
KO要件をN/A(不適用)と評価することはできない。すなわち、その評価はA、BないしDのいずれかで行わねばならない。IFSフードスタンダード第5版では、この規則の例外が存在する。CCP(重要管理点)の監視に関するKO要件2.1.3.8がそれに該当し、会社及び製造される製品の種類によっては不適用と評価することができる。
KO No.2:
2.1.3.8:各CCPの監視システム。企業がCCPを全く特定していない場合、監査員はこの要件をNA(不適用)と評価し、監査報告書にその理由を記さねばならない。
企業も同様に、この要件の不適用の理由を検証し、文書化しなければならない。
2:危害の分析
IFSフードスタンダード第5版では、「危害の分析」が諸要件の中で22回引用されている。用語集の中で、危害の分析とは、「危害の評価、危害の管理、そして危害の伝達というお互いに関連する3つの側面を持ったプロセス」であると定義されている。この定義はEC規則第178/2002号に由来している。しかしながら、この定義はこれらの22の要件には適用されない。
結局、IFSフードスタンダード第5版では、これら22の要件全てについて、危害の分析を「危険の分析」に差し替える必要がある。
「危険の分析」を採用すべき22の要件とは下記の通りである:
2.3 記録の保管
要件2.3.3
3.2.1 従業員の衛生
要件3.2.1.1
要件3.2.1.3
3.2.2 従業員、サービス業者及び外部訪問者の防護服
要件3.2.2.5
3.4 衛生設備、従業員の衛生用器具、及び従業員区画
要件3.4.5
要件3.4.8
4.5 製品の包装
要件4.5.5
4.6.2 外構
要件4.6.2.3
4.6.4.8 空調/換気
要件4.6.4.8.3
4.7 清掃と衛生
要件4.7.1
要件4.7.3
4.9 異物、金属、ガラス片及び木片混入リスク
要件4.9.1(KO)
要件4.9.2
要件4.9.4
要件4.9.9
要件4.9.12
要件4.9.14
4.18 アレルゲンと特定製造条件
要件4.18.3
5.1 内部監査
要件5.1.1(KO)
5.6 製品の分析
要件5.6.4
5.7 製品の凍結と解除
要件5.7.1
5.9 事象の管理、製品の回収/警告
要件5.9.4
解説:
危険の分析は監査員が理解しやすいものでなければならない。この分析はHACCP調査の危険分析(例えば従業員の衛生、清掃と消毒、等々)の枠内に正式に組入れることも、或いは監査員にとって明快であることを条件に他の証明法として用意することも可能である。
「危険の分析」が既に引用されていた4要件はそのまま残されており、変更されていない。すなわち、
2.1.3.5 各工程に対する危険分析の実施
要件2.1.3.5
要件2.1.3.5.1
4.3 製品開発
要件4.3.1
4.4 調達
要件4.4.4
3:CP−管理点(2.1.3.5.2)
IFS要件2.1.3.5.2:「CCP(重要管理点)ではなくCP(管理点)として特定されている全ての工程について、会社は特定の予防措置を導入、維持し、常套化を図ること。」
新方式:
IFS要件2.1.3.5.2:「CCPではなくCPとして特定されている全ての工程について、会社は特定の予防措置を導入、維持、監視し、常套化を図ること。」
4:包装に関する諸要件(4.5.3、4.5.4及び4.5.5)
全ての納入業者は、それぞれのレベルで、納入する製品(食品ないし包装)に責任を負う。したがって、彼らはIFSフードスタンダードの包装に関する諸要件が納入製品に適用されているか確認しなければならない。
IFS要件4.5.3:「食品と直に接触する全ての包装について、これらの包装がその用途に適合していることを証明するために適合証明書又は他の証明手段を用意すること。この要件は原材料、半製品及び最終製品と直に接触する包装を対象とする。半製品については、生産ゾーンのコンテナや搬送ベルトも含まれる。」
解説:
(例えばコンテナ或いは古い搬送ベルトに対する)適合証明書を入手できない場合には、危険の分析に基づく証拠を提出しなければならない。
IFS要件4.5.4:「全ての包装又は包装付属物は目的の用途に適応しており、製品及び消費者に対して起こり得る汚染や危険(相互作用)について試験を受けていなければならない。最新且つ適切な試験成績書が存在すること。」
解説:
危険の分析によれば、食品にマイナス影響を与える恐れのある全ての包装材料について試験成績書を用意しなければならない。
包装材納入業者は、それが適当な場合には、想定されている包装の用途に関する情報を提供する必要がある。移行試験成績書の提出が望まれる。試験成績書はEC規則第1935/2004号、EC規則第72/2002号並びにEC指針第85/572号に基づき行われたシミュレーション、又は現場で包装された製品をベースとすべきである。
IFS要件4.5.5:「危害分析危険分析に基づき、会社は各製品に対する包装材料の適合性を検証すること(例えば官能検査、保存試験、化学分析)。」
解説:
要件4.5.4に加え、被監査企業は自社製品の自前の包装を試験すべきであろう。実際に、「現実の」製品の反応がシミュレーション試験で使用された製品の反応と全く違うことがあり得る。包装材料を変更する場合も同様に、会社は自社製品でこの材料を試験すべきである。
5:IFS監査期間の勧告に関する詳細
監査プロトコルの5.3項は、監査を行うために必要な時間の評価基準を明示する。特に明示される点は:
「下記条件に該当する会社については最短で1.5日:
< 100名
< 同系列製品2種類
< 敷地の延床面積10,000 m2
< 2製造ライン
監査報告書の作成にプラス0.5日」
解説:
全ての要件について、不等記号「<」を「£」とする。
「下記状況で必要となる追加期間:
− 100名増えるごとに0.5日、
− 製品系列が2つ増えるごとに0.5日、
− 延床面積10,000 m2増えるごとに0.5日、
− 製造ラインが3つ増えるごとに0.5日」
解説:
いずれも「又は」ではなく、「及び」と解釈する必要がある。すなわち、上記の条件それぞれにつき0.5日ずつ加算されることになる。
具体例:
従業員200名、2つの製造ライン(各ライン2種類の製品)、そして延床面積20,000 m2の会社の場合、監査期間は以下の通りとなる:
最短期間1.5日、
人数が100名増えたことによりプラス0.5日、
延床面積が10,000 m2増えたことによりプラス0.5日、
合計:2.5日
6:IFSフードスタンダードとIFSロジスティック・スタンダードの境界の決定に関する、監査プロトコル付属書1の説明
IFSロジスティック・スタンダード(兵站基準)の適用について:
IFS:「自前のロジスティックないし輸送(貯蔵及び流通)部門/事業を持っている食品加工会社は、IFSフードスタンダードの輸送/貯蔵に関する副項目に従って認証を受ける。」
解説:
食品加工会社が所有するプラットホーム/倉庫が会社と同じ場所にあり、会社又は客先がこのプラットホーム/倉庫のIFSロジスティック認証を希望する場合には、IFSロジスティック・スタンダードの監査も実施できる。
この場合、下記要件を満たす必要がある:
- プラットホーム/倉庫は包装済み製品専用に使用される。
- 2種類の認証(IFSフードスタンダードとIFSロジスティック・スタンダード)を取得する場合、それぞれの監査及び認証の境界を明確に確定すること。
- IFSフードスタンダードの輸送及び保管に関する要件は、IFSフードスタンダード監査の際にも評価対象とする。
- 加工会社のIFSフードスタンダード監査を実施すること。IFSロジスティック・スタンダード監査は追加監査とする。
- プラットホーム/倉庫では全ての適切な書類が入手できること。
7:監査員用の製品部門
7.1:監査員用の製品部門に関するIFSパート3の付属書1に、IFSロジスティック・スタンダード監査のための製品部門13を追加する
付属書の表に、ロジスティック部門13を追加する。
7.2:製品部門6「新鮮、冷凍及び乾燥果物及び野菜」並びに部門10「缶詰及び調味料」に関する説明
缶詰野菜、調味野菜、缶詰果物或いはシロップ漬け果物の製造会社を監査する、製品部門10の資格を持つ監査員は、製品部門6の監査を実施できる。但し、この逆は認められない。すなわち、製品部門6の監査資格しか持っていない監査員は、たとえ缶詰果物や缶詰野菜であろうとも製品部門10の監査を行うことはできない。
8:卸売施設やC&C施設に対するIFSフードスタンダードの適用
a)監査の実施
IFSフードスタンダード第5版のチェックリストを全面的に適用し、監査を総合的に行い、監査終了時点で監査報告書を提出する。要件の不適用(N/A)については、その根拠を証明しなければならない。
b)監査の適用範囲
監査及び認証は会社の事業全てに適用される。この監査の範囲は新たなIFS製品カテゴリー19「卸売業者/C&C業者」に分類される。
この新しい製品カテゴリー19「卸売業者/C&C業者」は、例えば量り売り商品、包装商品、冷蔵商品、冷凍商品、解凍商品、等々の裸の商品を扱うあらゆる種類の卸売事業及び会社に適用することができる。一般に、C&C施設や卸売施設は全てこのカテゴリーに含まれる。
c)監査員の能力
製品カテゴリー19「卸売業者/C&C業者」の監査資格を持つIFS監査員になるには、製品部門1(白身肉や赤身肉、家禽肉、肉製品や肉加工品)又は製品部門2(生及び冷凍の魚、海産物及び加工品)の専門知識並びにIFS監査資格を持っていなければならない。
d)監査期間
一般的に、監査期間の決定に関するIFS要件を適用しなければならない。監査期間の短縮は可能であるが、その根拠を証明し、文書化する必要がある。
実際の加工を行っていない会社では、実際に加工事業を行っている会社に比べ、IFS要件の適用や監査がより簡単となる(例:処方、工程の妥当性検証、汚染防止、等々に関する諸要件)。したがって、監査期間の短縮も予定できる。
複数の事業所/施設と一つの管理拠点(本社)を有する企業の場合、監査は管理拠点からスタートし、中央が管理している全てのプロセスを検証しなければならない。この場合も、全ての事業所/施設を監査対象とする必要がある。
各事業所/施設で、監査員は中央で管理している全てのプロセスが現場に適正に導入され適用されているか、また必要な情報が全て入手できるかをチェックしなければならない。(例えば衛生、トレーサビリティ、内部検査、クレーム処理などの)プロセスが適正に管理されている場合、監査期間をIFS勧告より更に短縮できる。他の監査期間短縮ファクタを摘出することも可能である;例えば同じ監査員が管理拠点と事業所/施設の監査を行う場合、或いは事業所/施設の監査を行う監査員が中央レベルで管理しているプロセスに既に精通している場合など。
9:認証付与とIFS認証プロセス
IFSフードスタンダード第5版に記されているように、総合的なIFS認証プロセスは認証規格En 45011に全面的且つ独占的に関連している。
したがって、通常の認証プロセスについて認証規格En 45011が規定している通り、IFS認証は下記の段階を踏襲することが義務づけられている。すなわち、
- IFS監査の実施、
- IFS監査報告書の作成と評価、
- 認証決定とIFS認証の交付。
認証規格EN 45011に則りIFSに代わって認証業務を行う認証機関に対する認証が停止若しくは取り消されると、総合的な認証プロセスが停止し、この認証機関はIFS認証を交付できなくなる。たとえ監査が既に終了していても、或いは認証プロセスが進行中(報告書作成、認証決定などの段階)でも、停止又は取り消しの日以降、認証機関はIFS認証を交付できない。
解説:
パート1/項目2.1 監査プロトコルの目的と内容
「欧州規格EN 45011/ISO CEI、IFSのための指針65に基づき認証を受け、基準書所有者と契約を取り交わした認証機関だけがIFS基準に則り監査を行い、IFS認証を交付することができる。認証機関に関するIFS要件は、本書のパート3で詳述する。」
パート3/項目2.2 IFS所有者との契約締結
「IFSのために欧州規格EN 45011の認証を取得した認証機関は、IFS監査を行ってIFS認証を発行するために、IFS所有者と最終契約を取り交わす必要がある。この契約を締結しない限り、認証機関は、(認証取得プロセスの際の最初の事業監視を除き)IFS監査を行いIFS認証を交付することはできない。」
10:悪意行為に対するフードライン保護のチェックリスト
米国の場合、悪意行為に対するフードラインの保護は農産物加工企業にとって法定要件である。このため、IFSはこれをテーマにした諸要件をオプションとしてチェックリストの形式で基準書に導入することにした。
悪意行為に対するフードラインの保護は、犯罪やテロを含めた意図的な悪意行為から生産サイト、食品に接触する材料、並びに最終製品を守る目的で講じられた特定の安全措置全体の結果である。
以下に示すチェックリストは、農産物加工企業に適用を義務づけるものではない。このような側面にも配慮していることを顧客に証明しようと願っている企業に向けた、あくまでもオプションである。
チェックリストの要件の番号は、IFSフードスタンダード第5版に続くものである。すなわち、この基準書のパート2の6章となる。これら要件の評価は、IFSフードスタンダードのその他の諸要件の評価と同様である。具体的には、その適合度に応じてA、B、C又はDで各要件を評価できる。必要ならば重大不適合も採用可能である。
この章の最終評価は別途監査報告書に記述され、(1章から5章までの)IFSフードスタンダード監査成績書と切り離される。この最終評価がIFS監査の最終評価に対応することはない。
番号
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要件
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評価
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説明
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6.
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悪意行為に対するフードラインの保護
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6.1
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保護の評価
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6.1.1
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悪意行為に対するフードラインの保護について責任を明確に定義すること。責任者は経営陣の一員とするか、経営陣に接触できること。この分野の十分な知識を証明できること。
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サイトの安全に関する責任。
この分野での訓練ないし経験が必要。
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6.1.2
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サイト内で管理されている食品にマイナスの影響を与える恐れのある内外の活動に関する調査を行い、文書化すること。危害評価を行っていなければならない。この危害評価、並びに法定要件や特定されたニーズに基づき、安全上重要ゾーンを摘出し、定期的に見直すこと。
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あらゆる種類の有害な活動。
例えば内外のCARVER装置又は他の装置に基づく危害の評価。保護プログラム/計画の作成。文書化/監査報告書/記録
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6.1.3
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特定された危害を適正に管理するための十分な措置を講じる必要がある。事象は設定された場所に通知すること。様々な措置を講じて、その効果を定期的に評価すること。
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保護プログラム/計画の導入。
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6.1.4
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法律が現場での記録又は検査を求めている場合、それを証明すること。
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食料の安全、営業記録、FDA、等々
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6.2
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サイトの安全
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6.2.1
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危害の評価に基づき、安全上重要な特定のゾーンが摘出された場合、許可されていない者のこれらゾーンへの侵入ないし立入りを適切な手段で阻止すること。
注記:IFSフードスタンダードの要件4.6.2.4に立入りを阻止し検査する手段が規定されている。
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例:自動閉止扉、磁気カードによる立入り、職員の常駐、等々
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6.2.2
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進入ゾーンは常時検査対象とするか、許可された者以外の立入りを禁止すること。
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6.2.3
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屋外に保管される原材料、設備及び機器は、サイトの安全或いは悪意行為に対する保護を確保する上で妥当な場合には、許可を受けていない限り接近できなくすること。
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具体的にはサイロ、ガス塔、冷却システム、殺虫剤又は化学薬品保管ゾーン、パレット、等々。
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6.2.4
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入出荷する商品の取扱い一切を識別すること。
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スタンプ、番号処理、等々。
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6.3
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従業員及び訪問者の安全
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6.3.1
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外部からの訪問者及びサービス業者は、サイトに入る時点で記録すること。規則を伝え、用件をチェックすること。
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訪問者の立入り制限と検査。
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6.3.2
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従業員全員を対象に、悪意行為に対する保護についての教育を定期的に行うこと。教育を文書化すること。
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教育。
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6.3.3
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新規従業員を採用する際には安全面を考慮すること。それが必要で法律で許される場合には、新従業員の追加調査若しくはメディカルチェックを行うものとする。
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従業員募集時の安全:以前の雇用主への問合せ、前科がないこと、薬物検査、メディカル分析。
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6.4
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外部検査
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6.4.1
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外部の検査員並びに然るべき機関との関係について、文書化された手順が存在すること。
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納入業者監査の管理手順、責任の決定、所定の検査、教育。
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6.4.2
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納入業者監査の際に、他の顧客に関する情報を一切提供しないこと。
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工程、手順及び顧客関係の秘密保持。
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6.4.3
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サイトから顧客又は然るべき機関に対して情報や製品を提出する場合には、コピーないし同じサンプルを少なくとも一つは一定期間保管及び貯蔵すること。顧客自体の所有物の場合、特に外部検査の成績書の場合には、その顧客にその旨連絡しなければならない。
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サンプル、書類の記録。
顧客の製品の場合には、連絡する。
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